2022年GDP成長率予測を2.6%に下方修正、回復基調を維持するも減速

(スイス)

ジュネーブ発

2022年06月17日

スイス連邦経済省経済事務局(SECO)は6月15日、2022年の実質GDP成長率予測(スポーツイベントが現在の予定どおり開催された効果を織り込んだ数値:注)を2.6%と発表した(プレスリリースPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)、添付資料表参照)。前回の予測(2022年3月22日記事参照)から0.2ポイント下方修正した。

スイス経済は、第1四半期(1~3月)は産業部門に牽引されて予想どおり回復が続いた。年初は新型コロナウイルス対策によりサービス部門の一部が抑制されていたが、2月の対策緩和によって景気は回復に向かった。特に娯楽や宿泊・飲食サービス業は今後も回復が続くとみられる。また、労働市場の好調は個人消費支出を後押しし、インフレ率は世界水準と比べて抑制されており、短期的には回復基調が継続すると見込んでいる。

しかし、国際経済の見通しは悪化しており、ロシアによるウクライナ侵攻の影響が予想を上回る可能性がある。ロシアとウクライナの主要輸出品目であるエネルギー資源や食糧、家畜飼料の価格は世界市場で急騰しており、価格上昇圧力はスイスの主要貿易相手国の内需に重くのしかかり、スイスの輸出産業に悪影響を与えている。また、中国経済は厳格な新型コロナウイルス対策によって大幅に減速し、世界経済のリスク要因となっている。

こうした背景から、SECOはGDP成長率予測の下方修正を行い、2022年の消費者物価指数については、前回予測(3月)の1.9%から2.5%へ修正した。SECOは、物価上昇が個人消費へ波及し、さらに不確実性の高まり、世界的な供給難や物価上昇が投資活動を阻むことから、スイス経済が「新型コロナ危機」後、緩やかな成長を続けるものの、減速するとの見方を示した。その前提として、スイスの主要貿易相手国が深刻な不況に至らず、特に欧州で大規模なエネルギー資源や原材料不足が生じないことを掲げている。

2022年後半には新型コロナ危機後の経済回復ペースが弱まり、現在、景気減速要因となっている世界的な供給難やインフレ圧力上昇が沈静化すれば、経済の正常化が見込まれる。一方で、世界的な金融政策引き締めは経済を減速させる。こうした状況から、SECOは、2023年のGDP成長率を前回予測の2.0%から1.9%に下方修正、消費者物価指数を前回予測の年平均0.7%から1.4%へ修正した。労働市場については改善を見込んでいるが、2022年の平均失業率は2.1%、2023年は2.0%と予測し、いずれも据え置いた。

SECOは経済の下振れリスク要因を3つ掲げている。1つ目は、ウクライナ情勢による不確実性の高まりだ。戦況が一段とエスカレートしなくとも経済的影響はより深刻となり、ロシアからのエネルギー資源供給の制限などを受けてスイスの主要貿易相手国が不況に陥れば、スイス経済も大きな打撃を受ける。このシナリオでは、スイス経済は他の欧州諸国と同様に大幅な価格上昇圧力を受け、減速する。2つ目は、金利上昇による国際債務急増に伴うリスクや金融市場の調整リスクだ。SECOは不動産部門のリスクは国内外を問わずに依然大きいと指摘する。3つ目は、新たな変異株発生などによる新型コロナウイルス感染症の再拡大の可能性を除外できないことだ。とりわけ、中国の厳格な行動制限措置は国際経済への大きな打撃となるとした。

(注)スイスには、国際オリンピック委員会(IOC)、国際サッカー連盟(FIFA)、欧州サッカー連盟(UEFA)など主要国際イベントの本部があるため、イベント開催年に放映権収入がGDPを押し上げ、翌年にマイナスに作用するのが通例。このため、SECOはこの影響を除いた調整値を別途算出している。

(竹原ベナルディス真紀子)

(スイス)

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