新型コロナが下火に、マスク着用義務を撤廃

(スリランカ)

コロンボ発

2022年06月24日

スリランカ保健省は6月9日、マスク着用義務を翌10日から撤廃すると発表した。これにより、あらゆる屋内外のイベントや集会、冠婚葬祭などでマスクを着用する必要はなくなった。保健省は同時に、呼吸器疾患者に対しては引き続きマスク着用することを推奨している。

スリランカでは、6月に入ると1日当たりの新型コロナウイルス感染者数が4~14人と、1桁台前後で推移し、感染状況は落ち着いていた。人々の関心は新型コロナ禍から、物価高騰や燃料不足など経済問題に移っており、全国紙の1つは、2020年以降の新型コロナ禍期間を通じて、2面を使って新型コロナ特集コーナーに紙面を割き、感染者数やワクチン接種者数など日々の状況を逐一伝えていた。しかし、5月中旬にこのコーナーを廃止、通常の経済面に切り替えていた。

保健省の統計によると、6月16日時点で1回目ワクチン完了者は全国民の約78%、2回目完了者約66%、3回目のブースター接種完了者は約37%となっている。

政府は、今回のようなマスク着用義務撤廃の発表を4月18日に一度行っていた。その際には医療関係者らから「(経済危機対応に反発する)デモ活動で市民らが密状態にあり、クラスターが発生する恐れもある、マスク着用は引き続き必要」と指摘され、発表してから2日半後の21日にはマスク着用義務化を再開させていた。

マスク撤廃を初めて発表した4月には、物価高騰や食料・燃料不足に不満を募らせた反政府デモ隊による抗議活動が全土で活発化していた。4月3日にはマヒンダ・ラージャパクサ首相(当時)を除く26人の閣僚が一斉辞任、同月18日に新内閣が組閣されたものの、国民の納得を得られず、反政府デモ活動が続いていた(2022年4月26日記事参照)。デモ隊の中には、デモ活動で人の密が発生するため、クラスターやロックダウンを避けるためにマスク着用は必要だとして、保健省の発表に懐疑的な態度を示す人たちもいた。

5月9日には反政府デモ隊と政府養護派の間で衝突があり、死者も出た。その後、当時の閣僚の自宅が次々と焼き討ちに合うなど、治安が著しく悪化したため、ゴタバヤ・ラージャパクサ大統領は同11日、違法な略奪行為や暴力・破壊行為をするものに対し警察の発砲を許可するとの指示を出していた。

(糸長真知)

(スリランカ)

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