日系スタートアップの飛躍のために、「Deep techで世界を目指せ」をジェトロ共催

(日本、フランス)

イノベーション促進課

2022年06月15日

日系ディープテック(注)スタートアップの海外展開を促進するため、「Deep techで世界を目指せ」がHello Tomorrow Japan外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますとジェトロの共催で6月2日、リアルとオンラインのハイブリッドで開催された。欧州を代表する大企業や日系VC、スタートアップといったさまざまな有識者が登壇し、日系スタートアップが海外展開を行うためのポイントについて紹介した。

欧州大企業・CVCにとってスタートアップへの投資検討する上で重要な要素

基調講演では、欧州を代表する大企業やコーポレート・ベンチャー・キャピタル(CVC)が、日系ディープテックスタートアップへの投資を前提に、「どのようなスタートアップを求めているか」といった観点を説明した。農薬と防疫用薬剤の開発などに取り組むバイエル クロップサイエンス外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますのサイモン・メークリング博士は「投資を検討する際には、当社の戦略と合致しているか、そのテクノロジーがブレークスルー(課題を打ち破る革新的な解決策)をもたらすのかという点を重要視している」と説いた。ベルギーの大手化学メーカーのソルベイ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます傘下のソルベイベンチャーズ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますのイエ・エレン氏は「財務的なリターンや投資の規模、投資先のステージなども考慮するが、当社との戦略的な整合性が取れていることが投資を行う上で非常に大切だ」と述べた。

海外展開の一番の課題は「適切な人材の確保」

日系VCとしてディープテックスタートアップの支援を行う東京大学協創プラットフォーム開発(東大IPC)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますの長坂英樹氏と、リアルテックホールディングス外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますの藤井昭剛ヴィルヘルム氏を招いたパネルディスカッションでは、非言語を基本とするディープテックで海外展開を模索する上では「グローバルと一言でまとめてしまうのは危険」とし、地域ごとの特性(文化や宗教的背景)にあった製品を提供する重要性を述べた。

また、日系ディープテックスタートアップの多くは、優れた技術力のみを売りにする傾向にあるが、それだけではわなに落ちてしまうと藤井氏は警鐘を鳴らす。マーケットに対するビジネス戦略やチーム力の強さを同時に示していく必要があり、両氏ともに適切な人材が足りていないと指摘し、「特にセールスエンジニアのような技術をビジネス化するために十分な知識と経験を持ち合わせた人材が渇望されている」と長坂氏は語った。

写真 VCパネルディスカッションの様子(LIFE.14撮影)

VCパネルディスカッションの様子(LIFE.14撮影)

コンテストを契機に世界を目指せ

Hello Tomorrowの最高経営責任者(CEO)デュラツール・アルノ博士は、日系スタートアップに対して「最初に自国などの特定の国にフォーカスし過ぎると、後に海外展開を考える際に、同じ製品では他国で通用しない可能性があるため、最初から世界を見据えた戦略を立ててほしい」とメッセージを送った。

Hello Tomorrowは毎年、コンテスト「Hello Tomorrow Global Summit」をフランスで開催しており、その地域予選の1つが「Hello Tomorrow Japan Challenge」となる。Japan Challengeの2021年度受賞者でGlobal Summitにも参加したNUProtein(NUプロテイン)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます代表取締役の南賢尚氏とSyrinx(サイリンクス)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますプロジェクトリーダーの竹内雅樹氏からは、コンテストに向けての準備やさまざまな投資家・企業との出会いと、その後について自身の経験談が共有された。投資家や企業に対して臆せず自ら積極的にアピールすることの重要性が語られ、今回の参加者にとって大変有益な情報となった。

写真 Hello Tomorrow Japan Challenge2021年度受賞者によるパネルディスカッションの様子(LIFE.14撮影)

Hello Tomorrow Japan Challenge2021年度受賞者によるパネルディスカッションの様子(LIFE.14撮影)

2022年のHello Tomorrow Japan Challengeは6月30日まで参加者を募集している。Hello Tomorrow JapanのHP外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますから参加申し込みが可能。

(注)ディープテックとは、大学や研究機関、企業などで研究開発された技術を基に、世の中の生活スタイルを大きく変えたり、社会の大きな課題を解決したりするテクノロジーのことを指す。

(加藤優花)

(日本、フランス)

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