「第26回サンパウロLGBT+誇りのパレード」が対面開催、人権と多様性を尊重する企業努力の視点も

(ブラジル、世界、米国、スペイン、フランス、オランダ、英国、アルゼンチン、ドイツ、中南米)

サンパウロ発

2022年06月28日

6月19日に、南米最大の経済都市サンパウロ市内の目抜き通りであるパウリスタ大通りで「第26回サンパウロLGBT+誇りのパレード」が開催された(注1)。2019年の開催以降、3年ぶりのリアル開催となった。

サンパウロLGBT誇りのパレード協会の6月18日付公式発表によれば、今回の開催ではスペイン・テレフォニカ傘下のインターネットサービスプロバイダーのテハ、英国アルコール飲料ディアジオ傘下のスミノフ、米国ハンバーガーチェーンのバーガーキング、オランダ・ビール製造販売のアムステル、アルゼンチン・Eコマースプラットフォーマーのメルカドリブレ、フランス・ファッションブランドのジャンポール・ゴルチエ、ブラジル・通信事業者のビボ(注2)の大手企業7社がスポンサーとなった。また、フランス・ホテルチェーンのアコール、米国のスナック菓子ブランドのドリトス、ブラジルの医療研究機関ライス、英国の化粧品製造販売大手のエイボン・プロダクツ、米国たばこメーカーのフィリップモーリスの5社が後援した。

6月19日付現地紙「CNNブラジル」によれば、今回のイベントへの参加者数は約400万人(2019年は約300万人)となり、経済効果は5億~6億レアル(約130億~156億円、1レアル=約26円)が見込まれる(2019年の経済効果は約4億300万レアル)。

ブラジルでは、環境・社会・ガバナンス(ESG)の取り組みとして、企業によるLGBT+の人権尊重を唱える動きがみられる。例えば、大手企業約150社がメンバーとなっている「LGBTI+企業・権利フォーラム」は6月9日、ブラジルでLGBTQIAP+の起業家精神の育成や職場での平等機会を支持するNGOであるインスティテュート・マイス・ジベルシダージや米国NGOヒューマン・ライツ・キャンペーン財団(HRC)とともに、ブラジルの企業平等指数を初めて発表した(同フォーラム6月11日付公式サイト)。同指数は各企業の人権と多様性を尊重する企業努力を可視化するもので、非営利のシンクタンクHRCが2002年に生み出した「企業平等指数」(注3)に基づき、企業のLGBTI+に対する差別撤廃を評価する。ブラジルで行われた調査結果では、回答社数60社のうち、38社が満点の100点を獲得した(注4)。

写真 パレード壇上(ジェトロ撮影)

パレード壇上(ジェトロ撮影)

写真 カラフルなマントをまとう参加者(ジェトロ撮影)

カラフルなマントをまとう参加者(ジェトロ撮影)

写真 会場近くのスーパーマーケットで販売された「ドリトス・レインボー」(ジェトロ撮影)

会場近くのスーパーマーケットで販売された「ドリトス・レインボー」(ジェトロ撮影)

(注1)リオ・グランデ・ド・スル州労働裁判所の公式サイトによれば、LGBT+は、それぞれレズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー、プラス(+)は左にあてはまらないものや流動性のある変化を包含することを意味する。本文では出所に基づいた表記を優先し、「LGBT+」、(Q)クィア(I)インターセクシャル(A)アセクシュアル、(P)パンセクシュアルを含む「LGBTQIAP+」、(I)インターセクシャルを含む「LGBTI+」などさまざまな表現をそのまま記載している。

(注2)ビボの主要株主はスペイン・テレフォニカとポルトガルテレコム。

(注3)企業平等指数は、各企業のLGBTQ+の平等性や社会に関する取り組みなどを0~100点で評価する。HRCは非営利のシンクタンクで、LGBTQ+の人権尊重と差別撤廃を目的に米国で2002年から本調査を実施している。メキシコ版の指数は2016年、チリ版の指数は2018年に設けられた。ブラジルをはじめ、米国、メキシコ、チリの4カ国で100点満点を獲得した企業は米国アクセンチュア、ドイツのアディダス、BASF、米国のカミンズ、ゼネラル・エレクトリック、JPモルガン・チェース、ドイツのSAPの7社。

(注4)調査実施時期は2021年12月から2022年2月まで。

(古木勇生、エルナニ・オダ)

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