欧州委、ウクライナとモルドバの加盟候補国認定を勧告、ジョージアは保留

(EU、ウクライナ、モルドバ、ジョージア)

ブリュッセル発

2022年06月20日

欧州委員会は6月17日、ウクライナのEU加盟に関する意見書PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を発表(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)し、ウクライナに対する加盟候補国の認定をEU理事会(閣僚理事会)に勧告した。ウクライナは、ロシアによる侵攻開始から5日目となる2月28日、EUへの加盟を申請。EU理事会は3月7日、EU加盟プロセスの第1段階となる加盟候補国の地位を付与するかを判断すべく、欧州委に対して、ウクライナが加盟基準を満たす能力が整っているかを評価し、意見書を提出するよう要請していた(注)。

今回の意見書の発表を受けて、6月23~24日に開催される欧州理事会(EU首脳会議)で、ウクライナのEU加盟について協議が行われるとみられる。全加盟国がウクライナの加盟候補国の認定を承認した場合、EU理事会はウクライナに対して加盟候補国の地位を付与することになる。ただし、加盟候補国の認定は、即座の加盟交渉の開始を意味するわけではなく、認定に合わせて、ウクライナには厳格な交渉開始条件が課される可能性がある。また、欧州委は、交渉開始後も、ウクライナは既存の加盟基準や条件を満たすことが必要と強調しており、加盟交渉は長期化することが予想される。

今回の意見書の発表に先立ち、フランスのエマニュエル・マクロン大統領、ドイツのオラフ・ショルツ首相、イタリアのマリオ・ドラギ首相、ルーマニアのクラウス・ヨハニス大統領は6月16日、ウクライナの首都キーウ(キエフ)を訪問し、ボロディミル・ゼレンスキー大統領と会談。その後の記者会見で、マクロン大統領は他の首脳陣とともに「われわれはウクライナへの加盟候補国の地位の即座の付与を支持する」と明言し、加盟国の全会一致に向けて、今後、数日中に他の加盟国に働きかけるとした。マクロン大統領は、3月時点ではウクライナのEUへの早期加盟に否定的な立場を示していたことから(2022年3月14日記事参照)、ウクライナにとっては大きな追い風となりそうだ。

モルドバに対しても加盟候補国の認定を勧告、ジョージアは保留

欧州委はまた、ウクライナと同様に、3月にEU加盟申請を行ったモルドバとジョージアに関する意見書を発表した。モルドバに対しては、加盟候補国の地位付与を勧告。一方で、ジョージアに対しては、加盟の方向性を認めるものの、今後取り組むべき優先事項が実施されるまでは、加盟候補国の認定を保留すべきとした。

(注)EUの加盟プロセスと加盟条件などの詳細については、地域・分析レポート「ウクライナは、EUに加盟できるのか」を参照。

(吉沼啓介)

(EU、ウクライナ、モルドバ、ジョージア)

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