グリーン水素で稼働する世界最大級の鉱山トラックを発表

(南アフリカ共和国)

ヨハネスブルク発

2022年06月06日

大手鉱業企業のアングロアメリカ・プラチナムは、南アフリカ共和国リンポポ州にあるモガラクウェナプラチナ鉱山で5月6日、グリーン水素駆動の鉱石運搬ハイブリッドトラック「nuGenトラック」の試作モデル発表式典を執り行った。同社は、南ア政府が推進する「水素社会ロードマップ」の水素バレー構築に協力している(2022年2月28日記事参照)。

今回発表したモデルは、グリーン水素で稼働する世界最大級のトラックだ。2メガワットの水素バッテリーを搭載し、同サイズの従来のディーゼル車よりも運搬能力が高く、290トンの積載量が可能だ。このトラックは、多国籍電力会社エンジーをはじめ、エンジニアリング会社や、クリーンエネルギー燃料電池会社など5社が協力して2019年から設計・開発を始めたもので、今回試作品発表にこぎつけた。また同モデルは、コマツ製の「930E」に装備されたものだ。

親会社のアングロ・アメリカンCEO(最高経営責任者)のダンカン・ワンブラッド氏は「このモデルがわが社の世界中の鉱山で使われるようになると、ディーゼルからの排出物の最大80%を除去できる」と語った。式典に出席した、南アのシリル・ラマポーザ大統領は「水素経済の発展は南アにとって戦略的優先事項の1つ」と述べ、同社が今後、北東部のモガラクウェナにグリーン水素の製造、補給、運搬、運用までを統合して行う複合施設の建設を計画していることについては、同国の水素分野におけるポテンシャルを表しているとした。

なお、南アの専門家によれば、同国におけるグリーン水素は、現状では生成コストが1キログラム当たり5~8ドルと高いが、ビジネスとして成立させるためには、これを1~2ドルまでに引き下げる必要があるとされる。このように課題は多いものの、今後の南ア経済にとって重要なセクターになることが期待される。

(堀内千浪)

(南アフリカ共和国)

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