ブラジル政府、OECD加盟の意欲や世界のエネルギー・食料安全保障への貢献可能性アピール

(ブラジル、ロシア、ウクライナ、欧州)

サンパウロ発

2022年06月23日

ブラジル政府は6月14、15日の2日間、同国最大の投資誘致イベント「ブラジル投資フォーラム(BIF2022)」をリアルとオンラインのハイブリット形式で開催した(注1)。

ブラジル輸出投資振興局(Apex-Brasil)は15日の公式サイトで、約5,000人が登録し、61カ国のビジネスマン約800人が会場のワールド・トレード・センターに来場し、4,000人超がオンラインで視聴したと発表した。

14日の開会セレモニーには、ジャイール・ボルソナーロ大統領をはじめ、主要閣僚らが登壇した。カルロス・フランサ外相は「ブラジルはOECD加盟に向けた取り組みとして、ブラジル経済の近代化・国際化に着手している」と説明した。イベントでは14日に「OECD加盟と投資へのインパクト」というテーマ別セッションを設け、米州開発銀行のスザナ・コルデイロ・ゲハ開発制度部長が、ブラジル経済省傘下の応用経済研究所(IPEA)のデータ(6月3日公開)として「ブラジルがOECDに加盟することでGDPを0.4%押し上げる効果がある」と紹介した。そのほか、経済省のマルセロ・グアラニス次官は「BRICSの一角をなすブラジルがOECD加盟国になれば、先進国と新興国の橋渡しの役割を担い、OECD側もメリットを享受できる」とコメントした(注2)。

パウロ・ゲデス経済相は14日の開会セレモニーで、世界経済が新型コロナウイルス感染拡大による打撃から回復途上にある中、ロシアのウクライナへの軍事侵攻によってグローバルサプライチェーンが寸断され、世界各国へのロシアからのエネルギー供給とウクライナからの食糧供給が難しくなった状況を踏まえ、「エネルギーと食糧の両分野でブラジルが供給者としての役割を果たせる」と強調した。また「欧州諸国はエネルギー安全保障の観点で、アジア諸国は食糧安全保障の観点で既にブラジルの供給力に着目している」と補足した。

鉱山エネルギー省傘下のエネルギー調査会社EPEの公式サイトによると、ブラジルは豊富な水力資源を中心にサトウキビ由来のバイオマス発電や、北東部を中心とした風力、太陽光発電など多様なエネルギー源がある(注3)。エネルギー安全保障の観点については、例えば、2021年に北東部セアラ州に所在するぺセン工業港湾コンビナートで官民が協力してグリーン水素の生産を促す「グリーン水素ハブ」が設けられ、欧州企業などが欧州や北米向けのグリーン水素生産に向けた投資を発表する動きがある。食糧安全保障の観点では、例えば、ウクライナの主要輸出品目であるトウモロコシの輸出量を国連食糧農業機関(FAO)の統計(FAOSTAT)で見た場合、2020年のトウモロコシ輸出量はウクライナが世界第4位、ブラジルが世界第3位となっており、ブラジル産トウモロコシへの需要が高まるとみられる(注4)。

写真 6月14日の開会セレモニーでの(左から)カルロス・フランサ外相、ジャイール・ボルソナーロ大統領、パウロ・ゲデス経済相(ジェトロ撮影)

6月14日の開会セレモニーでの(左から)カルロス・フランサ外相、ジャイール・ボルソナーロ大統領、パウロ・ゲデス経済相(ジェトロ撮影)

(注1)主催者はブラジル外務省と経済省、米州開発銀行(IDB)、ブラジル輸出投資振興局(Apex-Brasil)。今度で5回目の開催。開催場所はサンパウロ市内のワールド・トレード・センター。

(注2)テーマ別セッションには、外務省のセルソ・ジ・タルソ・ペレイラOECDチーフゼネラルコーディネーターも登壇し、「OECDはブラジル加盟に向けたロードマップを既に承認している。ブラジルはOECDが定める条件を満たしていかなければならないが、容易な条件ばかりではなく、加盟までに要する期間は見通しづらい。場合によっては2年から4年程を要する可能性もある」と説明した。

(注3)ブラジルは発電比率の約85%が再生可能エネルギー。

(注4)FAOSTATで「Maize(トウモロコシ)」で抽出した結果。ブラジル農牧研究公社(EMBRAPA)は2021年6月1日、ブラジルが輸出競争力を持つ品目としてトウモロコシを挙げている。

(古木勇生)

(ブラジル、ロシア、ウクライナ、欧州)

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