石油・ガス大手で構成する「OGCI」、電気モーターメーカーの米ターンタイドに投資

(米国)

ヒューストン発

2022年06月22日

世界的な石油・ガス開発企業12社で構成する「石油・ガス気候変動イニシアチブ」(OGCI、注1)は6月21日、米国の電気モーター製造企業ターンタイド・テクノロジーズ(本社:カリフォルニア州サニーベール)への出資を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。ターンタイドは、OGCIの出資を含めて8,000万ドルの資金を確保したことで企業評価額が10億ドルを超え、ユニコーン企業(注2)のステータスに到達したとしている。

ターンタイドは商業、産業、モビリティー分野向けに、エネルギー効率の高い電気モーターを製造している。スイッチド・リラクタンス・モーター(SRM)と呼ばれる電気モーターは、自社が保有する特許技術を用いたもので、材料については採掘に際し環境破壊の恐れのあるレアアースを使用する必要がなく、全て一般的に入手可能な材料での製造が可能だ。

OGCIの発表では、現在、世界の電力消費のうち消費量が最大とされている電気モーターのエネルギー効率の向上は、温室効果ガス(GHG)排出削減の重要な解決策の1つとしている。加えて、同社製品の普及により、モーター製造時のGHG排出が削減され、製造に伴うサプライチェーンの混乱も軽減されるとしている。

さらに、SRMは、高度な電子制御ソフトウエアと組み合わせることで、用途に応じて15~85%のエネルギー効率の向上が可能となり、現在、HVAC(注3)、農業、商業、工業、石油・ガス、モビリティーなどの幅広い分野で使用されている。

OGCIのベンチャー部門マネジングディレクターのマーク・ファン・デン・ベルグ氏は「われわれは炭素集約型分野の技術に投資し、短期間でGHG排出削減を実現する。ターンタイドのソリューションにより、世界中の何百もの企業がエネルギー消費とコストの削減を推進している」と述べている。

OGCIは炭素集約型分野への投資を進めており、2022年5月31日にニッケル・亜鉛電池メーカーの米ジンク・ファイブ(本社:オレゴン州テュアラティン)に出資したと発表した(2022年6月8日記事参照)。

(注1)Oil and Gas Climate Initiative。パリ協定を明示的にサポートし、気候変動への業界の対応を加速することを目的として、2016年に設置され、10億ドル以上のファンドを有している。構成メンバーは、アラムコ、シェブロン、エクイノール、エクソンモービル、ペトロブラス、シェル、トタルエナジーズなど12社。

(注2)企業評価額が10億ドル以上、かつ設立10年以内の非上場ベンチャー企業の総称。

(注3)空調工学(Heating, Ventilation, and Air Conditioning)を意味し、室内環境の調整・測定・評価などを行う工学。

(沖本憲司)

(米国)

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