米穀物メジャーADM、石油精製最大手マラソンとノースダコタ州で大豆加工工場を建設

(米国)

シカゴ発

2022年06月15日

米国穀物メジャーのアーチャー・ダニエルズ・ミッドランド(ADM、本社:イリノイ州シカゴ)と、マラソン・ペトロリアム(MPC、本社:オハイオ州フィンドリー)は6月2日、ノースダコタ州初の大豆加工専用工場の建設を開始したと発表した。両社は同日、同州のダグ・バーガム知事(共和党)などを招いて、グリーンバイソンと名付けた工場で起工式を行った。今回の工場建設は、大豆、トウモロコシ、小麦などを使用した加工食品や、飼料などに加え、トウモロコシ由来のエタノールなどバイオ燃料の製造販売も手掛けるADMと、米国で最大の原油処理能力(2020年末現在で日量約290万バレル、1バレルは約159リットル)を有する石油精製最大手MPCとの異業種ジョイントベンチャーとして注目されている。

ノースダコタ州東部のジェームズタウン近郊の同工場では、日量15万ブッシェル(約4,100トン)の大豆から、年間7,500万ガロン(日量約5,000バレル)の再生可能ディーゼル燃料の原料に相当する大豆油を生産する計画だ。総工費は約3億5,000万ドルで、2023年秋の大豆収穫時の稼働を目指している。生産された大豆油は、MPCが全量を引き取る。

MPCは、同州西部に保有するディキンソン製油所の原油処理(処理能力:日量1万9,000バレル)を停止し、同製油所の水素化精製装置などを活用して再生可能ディーゼルを製造するバイオリファイナリーに転換している。大豆油などを原料に日量1万2,000バレルの再生可能ディーゼル燃料を製造できるプラントが既に稼働しており、グリーンバイソン工場で生産される大豆油は、主にディキンソン製油所に供給されるものと考えられる。

再生可能ディーゼル製造施設の新設や拡張が相次ぐ

カルフォルニア州が独自に導入している低炭素燃料基準(Low Carbon Fuel Standard)によると、原料油脂を高温高圧化で水素化処理することで生成される再生可能ディーゼルは、ライフサイクルで温室効果ガス排出量が少ないと評価されている。同州で再生可能ディーゼルを販売することにより、多くの排出権クレジットを得られるという経済的メリットを背景に、石油精製企業などによる再生可能ディーゼル製造施設の新設や拡張計画が相次いでいる。米国エネルギー省は、2021年末で日量7万バレル程度だった再生可能ディーゼルの生産量が2023年末には日量11万バレル程度まで増加すると見込んでおり、原料となる植物油や獣脂の確保が課題として指摘されている。

(上村真、星野香織)

(米国)

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