米税関、ウイグル強制労働防止法の輸入者向けガイダンス公表

(米国、中国)

ニューヨーク発

2022年06月14日

米国税関国境保護局(CBP)は6月13日、2021年末に成立した中国の新疆ウイグル自治区が関与する製品の輸入を原則禁止する法律〔ウイグル強制労働防止法(H.R. 6256、UFLPA)〕(2021年12月23日記事参照)に関して、輸入者向けの運用ガイダンスを公表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。ガイダンスは(1)UFLPAに基づく輸入手順と執行、(2)輸入例外の申請、(3)サプライチェーン・デューディリジェンスなどに関わる参考資料、(4)輸入例外が認められるために提出すべき書類の種類と性質について説明している(注1)。

UFLPAに基づく輸入禁止措置は6月21日に有効となり、CBPは同日から同法執行を開始する予定だ(2022年6月2日記事参照)。輸入禁止の発効日が迫る中、産業界からは輸入物品が強制労働に依拠していないことを証明する方法など、輸入者向けのガイダンスを早期に公表するよう要望が出ていた(2022年4月21日記事参照)。

UFLPAに基づく輸入禁止措置は、6月21日以降に米国に輸入された物品に適用される。

(1)UFLPAに基づく輸入手順と執行について、CBPは合衆国法典第19編1499条PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)連邦規則集第19編151.16条外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで定めた手続きに基づき、輸入差し止めを決定する前に貨物を検査する。検査開始から5日以内(土日祝日を除く)に解放されない場合、貨物は差し止め扱いとなる。また、検査開始から原則30日以内に輸入が認められなければ、貨物は通関から排除されるが、輸入者は税関の電子申請システム(Automated Commercial Environment:ACE)を通じて異議を申し立てることが可能となっている(注2)。通関から排除された貨物は、最終的に税関による押収・没収の対象となり得る(注3)。

(2)輸入例外の申請について、CBP局長は、輸入者がUFLPAに基づくガイダンスなどを順守し税関の照会に対応した上で、輸入物品が強制労働に依拠していないことを証明する「明白で説得的な証拠」を提出した場合に限り、輸入を認める(注4)。輸入者は貨物の差し止め、通関からの排除、押収の各段階で輸入例外を求めることができる。

(3)サプライチェーン・デューディリジェンスなどに関わる参考資料については、米国政府や国際機関が公表している各種ガイダンスなどを列挙している(注5)。

(4)輸入例外が認められるために提出すべき書類の種類と性質については、輸入物品が新疆ウイグル自治区で生産などされていないことを証明する場合と、中国原産品が強制労働に依拠していないことを証明する場合に分けて記されている。前者に関しては、サプライチェーン全体、輸入物品とその構成品、物品の生産者のそれぞれに関する情報が必要となる(ガイダンスのIV章D、B、注6)。後者に関しては、物品の生産に関わる全ての事業者を特定した「サプライチェーン・マップ」や各事業者で働く労働者に関する情報が求められる(IV章E)。そのほか、輸入例外を求める際に提供すべき情報として、デューディリジェンスの手続きなどに関する項目も示している(IV章A、C)。

(注1)CBPは今回のガイダンスと併せて、6月21日に公表されるUFLPAの執行戦略に含まれる輸入者向けガイダンスを順守するよう求めている。なお、UFLPAで特定が求められている、新疆ウイグル自治区で強制労働により物品を生産している事業体などのリストは今回のガイダンスには含まれていない。同リストは、今後官報で公示する予定。

(注2)異議申し立ての手続きについては、合衆国法典第19編1514条PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)連邦規則集第19編174条外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを参照。

(注3)CBPは貨物の輸入差し止め、通関からの排除、押収の各段階で輸入者に通知を行う。

(注4)輸入例外を認めた場合、CBPは30日以内に議会に報告し、輸入を認めた物品と輸入例外の理由をまとめた報告書を公表する。

(注5)UFLPAの執行戦略には、同法に基づく輸入者向けのデューディリジェンス指針などが含まれる予定。

(注6)ガイダンスの付属書では、強制労働のリスクが高いとされる綿、ポリシリコン、トマトを輸入する際に求められる可能性のある書類の内容を例示している。

(甲斐野裕之)

(米国、中国)

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