米政府、ウイグル強制労働防止法に関する公聴会開催、米産業界からは法執行の透明性求める声

(米国、中国)

ニューヨーク発

2022年04月21日

米国国土安全保障省(DHS)は4月8日、2021年末に成立した中国の新疆ウイグル自治区が関与する製品の輸入を原則禁止する法律〔ウイグル強制労働防止法(H.R. 6256、UFLPA)〕に関するオンライン公聴会を開催した。公聴会では事前に官報で公示されたトピック(2022年3月17日記事参照)について、有識者や業界団体を含む利害関係者が証言した。

UFLPAに基づく輸入禁止措置は、同法成立から180日後となる6月21日に有効になる(注1)。それまでに、DHSなどで構成される強制労働執行タスクフォース(FLETF)が、今回の公聴会や事前のパブリックコメントで聴取した意見を踏まえ、具体的な運用計画を策定する。公聴会の冒頭、DHSのロバート・シルバーズ次官(戦略・政策・計画担当)は、強制労働により生産された物品は米国の労働者や製造業者の競争力を損ねると指摘し、UFLPAの執行戦略の作成はバイデン政権の優先課題だと強調した。

公聴会では、米国業界団体などからは、強制労働に対処することへの賛同とともに、法執行における透明性や官民連携を求める声が相次いだ。全米民生技術協会(CTA)は、輸入禁止発効日よりもできるだけ早い時期に輸入者向けガイダンスを公表し、強制労働に依拠していないことを証明する「明白で説得的な証拠」の基準などを明確にするよう求めた。また、企業がガイダンスに対応する時間を確保するため、利害関係者との対話を伴う段階的な法執行を要望した。米国アパレル・履物協会(AAFA)は、サプライチェーン上で強制労働がないことの証明方法に関して、FLETF の認証を受けた第三者による監査制度の活用を提案した。全米外国貿易評議会(NFTC)は、強制労働の疑いにより貨物を保留する際の明確な基準を定めるべきとしたほか、FLETFが執行戦略に含めるデューディリジェンス指針は具体的で実行可能なものとするよう提言した。

一方、労働者団体などからは、厳格な執行を求める意見が上がった。米国労働総同盟・産業別組合会議(AFL-CIO)は、強制労働は不公正競争の一形態だと指摘。UFLPAの下で認められる輸入手続きの基準について、違反商品保留命令(WRO)で認められる一般的な手続きよりも厳しくするよう求めた(注2)。加えて、産業界の一部が望む執行の後ろ倒しについては、発効日を6月と明記したUFPLAの条文に矛盾するとして反対を表明した。また、英国シェフィールドハラム大学で人権問題を研究するローラ・マーフィー教授は、新疆ウイグル自治区では通常のデューディリジェンスを行うだけでは不十分と訴え、中国の反外国制裁法(2021年6月14日記事参照)を念頭に、監査が十分に機能しない可能性に言及した。

(注1)DHSに属する米国税関国境保護局(CBP)は、3月にUFLPA に関する専用ウェブページ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを立ち上げ、最新情報を提供している。同ページによると、CBPは、UFLPAに基づく輸入禁止措置が発効する6月21日に先立ち、同法の対象となり得る物品を過去に輸入したことがある輸入者に通知を送り、強制労働問題への対応を促すとしている。

(注2)CBPは、1930年関税法307条に基づき、強制労働に依拠した製品の輸入を差し止めるWROを発令する権限を有する。米国における人権関連法・規制や、サプライチェーンに関わる規制の運用、実務上の対応などについては、2021年6月25日付地域・分析レポート参照。

(甲斐野裕之)

(米国、中国)

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