カナダ政府、米USTRの乳製品関税問題の紛争解決協議申し入れに声明発表

(カナダ、米国)

米州課

2022年06月01日

カナダ政府のメアリー・エング国際貿易・輸出振興・中小企業・経済開発相は5月25日、米国通商代表部(USTR)が米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA、カナダはCUSMAと呼ぶ)に基づき、カナダに対して乳製品の関税割当制度(TRQ)の運用に関して紛争解決のための協議を申し入れた件(2022年5月26日記事参照)に関して声明を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

エング国際貿易相は声明の中で「カナダはCUSMAに基づく義務を果たしており、わが国のTRQはCUSMAに準拠していると確信している」と述べ、「われわれは、合意の一部として紛争解決メカニズムを開始する米国の権利を尊重する」とする一方で、「カナダはCUSMAの協議プロセスに積極的に参加し、わが国の供給管理制度を維持する観点からTRQを運用するというわれわれの立場を引き続き保持する」と述べている。

カナダ政府の声明を受け、カナダ乳製品加工業者協会(Dairy Processors Association of Canad:DPAC)は5月26日付でカナダ政府の見解を支持する声明を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。DPACは、USTRの申し立てによる前回2021年1月のパネル裁定に関しては、カナダが「割り当てメカニズムの設計と実施に大きな裁量権を持つ」ことが認められたことが重要な点としたほか、カナダ政府が貿易上の約束と国内供給管理制度の安定性とのバランスを取るTRQ配分メカニズムを実施する能力を守るため、引き続きカナダ政府と協力していく意向を示している。

一方で、米国政府による今回の協議申し入れについて、米国の業界団体は米国政府の立場を支持する声明を発表している〔全米牛乳生産者連盟(NMPF)と米国酪農輸出協会(USDEC)の共同声明、5月25日外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます〕。

米国はカナダのTRQ運用に関して、低税率での輸入枠の大部分を米乳製品業者と競合するカナダの乳製品加工業者のために確保していることがUSMCA違反になると主張していた。

報道によると、カナダは、市場の大部分を支配する大手乳業3社のサプート、アグロピュール、フランスの乳業大手ラクタリスのカナダ部門を含む国内の加工業者向けにほぼ全てのTRQを確保していることが問題と指摘している(「フィナンシャル・ポスト」紙5月25日)。

(高山さわ)

(カナダ、米国)

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