クロアチア、2023年初のユーロ圏加入が確実に

(EU、ユーロ圏、クロアチア)

ブリュッセル発

2022年06月07日

欧州委員会は6月1日、2022年版収斂(しゅうれん)報告書を公表し、クロアチアの2023年1月1日からのユーロ圏加入に向けた準備が整ったと結論付けた(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。これにより、クロアチアでは2023年初からのユーロの導入が確実となった。クロアチアが加入すれば、ユーロ圏は20カ国となる。

収斂報告書は、欧州委が非ユーロ圏のEU加盟国(デンマークを除く、注)がユーロを導入するための「経済収斂基準」を満たしているかについて、原則2年に一度評価するものだ。経済収斂基準は主に、物価安定性、健全な財政、為替レートの安定性、長期金利の安定性という4つの基準からなる。今回の報告書によると、クロアチアは評価対象の7加盟国の中で唯一、4つの基準の全てで基準値を満たし、かつ同国の法制度がEU法や欧州中央銀行(ECB)定款に整合的であることが確認された。今後、ユーログループ(ユーロ圏財務相会合)や、6月23、24日に予定される欧州理事会(EU首脳会議)での同意を得た上で、7月前半にEU理事会(閣僚理事会)でクロアチアのユーロ圏加入が正式決定される見込みだ。欧州委のパオロ・ジェンティローニ委員(経済担当)は「ユーロ導入は価格の透明性を高め、輸出入にかかる取引コストを低減させ、クロアチアの経済競争力を高める。他方、現在のインフレ状況下で、市民は通貨の変更時に生じ得る値上げを懸念しており、クロアチア当局は便乗値上げなどの行為を抑止すべく、必要な措置を講じなければならない」と指摘した。

ブルガリアは2024年のユーロ圏加入目指す

また、ジェンティローニ委員は、ブルガリアが2024年のユーロ圏加入を目指していることにも言及し、欧州委として加入に向けて引き続き同国を支援していくとした。今回の報告書では、ブルガリアは4つの経済収斂基準のうち、物価安定性のみ基準を満たしておらず、また、一部の国内法制のEU法整合性に問題が残ると評している。

(注)EU条約に基づき、EU加盟国は経済通貨同盟(EMU)に加盟し、適用除外を選択したデンマークを除き、ユーロ圏の一員となることに法的に同意している。しかし実際には、ユーロ圏への参加は各加盟国による政治的判断に委ねられており、例えば、スウェーデンは2003年の国民投票でユーロ圏参加を否決し、事実上適用除外国となっている。

(安田啓)

(EU、ユーロ圏、クロアチア)

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