米アップルがパレスチナの研究開発拠点を強化

(イスラエル、パレスチナ、米国)

テルアビブ発

2022年06月30日

6月28日付「カルカリステック」紙や6月29日付「グローブス」紙など、複数のイスラエル現地紙は、米アップルが既にパレスチナに研究開発(R&D)拠点を設置しており、今後その体制を拡大する予定と発表したと報じた。本件は、アップルのイスラエルR&D拠点のトップであるジョニー・スロウジ上級副社長とアイザック・ヘルツォーク・イスラエル大統領との会談に合わせて発表された。

両紙の報道によると、アップルは従前から、パレスチナ自治区のラマッラーに本拠を置く開発請負事業者であるASALテクノロジーズ(パレスチナ企業)と提携していた。このASALテクノロジーズと共同で、2018年8月に同自治区の新興都市ラワビに5人のパレスチナ人エンジニアを雇用したことが、アップルのR&D拠点設置の始まりだという。

アップルはこれまで同拠点の設置を公表していなかったとみられるが、現在では約60人体制に拡大。イスラエル国内のヘルツエリヤとハイファに置くR&D拠点とも協働し、数あるアップルのソリューションの中でも、特にハードウエアに関する技術開発を行っているという。

「グローブス」紙によると、アップルのラワビのR&D拠点設置に関しては、パレスチナ系米国人実業家のバシャール・マスリ氏が関与しているという。マスリ氏は、カタールの支援を受けてラワビの都市建設を主導しており、ASALテクノロジーズの取締役も務めている。

パレスチナは、2022年6月に欧州委員会(EC)が同地における経済のデジタル化やイノベーションの多様化を通じた経済の活性化を目指すと発表するなど(2022年6月21日記事参照)、開発援助においても、デジタル技術開発やイノベーション促進という分野に注目が集まっている。

またイスラエルでは、ハイテク産業における人材供給の面での懸念があるが(2022年3月28日記事参照)、今回のアップルの発表によって、現在イスラエルにR&D拠点を構える企業を中心に、パレスチナの研究開発人材の活用や同地での新たな拠点設置などが検討される可能性もある。

(吉田暢)

(イスラエル、パレスチナ、米国)

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