強盗事件などラマポーザ大統領めぐる一連の動きに警察が捜査開始

(南アフリカ共和国)

ヨハネスブルク発

2022年06月27日

南アフリカ共和国では、シリル・ラマポーザ大統領の農場で発生した強盗事件から同大統領にさまざまな疑惑が浮上していることについて、与党内外から大統領の説明責任や退陣を求める声が上がっている。メディアは6月17日、南ア警察当局が今回の事件に関する調査を開始したと報じた。

事の発端は、国家安全保障局(SSA)のアーサー・フレイザー元局長が6月初めに警察に送った刑事訴状だ。事件は2020年2月、ラマポーザ大統領がリンポポ州に保有する商業狩猟農場内の大統領邸に強盗が入り、ソファのクッションから約400万ドルが盗まれたというもの。同氏によると、大統領は警察に捜査を依頼するのではなく、大統領警護部隊(PPU)を違法に使って容疑者を捕縛・尋問し、申告していない現金の存在(脱税)を隠すために賄賂を渡して釈放したという。さらに、容疑者の1人が隣国ナミビアに逃げ込んだため、同国のハーゲ・ガインゴブ大統領にも逮捕の協力を依頼したと報告した。

フレイザー氏はSSA局長時代に前大統領のジェイコブ・ズマ氏と親しく、ズマ氏が収監された際には、同氏の医療仮釈放を認めないという諮問委員会の決定を覆した。フレイザー氏が2年前の事件をこの時期に公にしたことについては、2022年12月に控える「アフリカ民族会議(ANC)」の総裁選を見越してのことと考えられている。

大統領府は6月2日、「フレイザー氏が主張する犯罪行為には何の根拠もない」との声明を出した。ラマポーザ大統領自身は強盗事件があったことは認めつつも、違法行為については否定し、全面的に捜査に協力するとしている。

同大統領は、ズマ政権時代にまん延していた汚職を撲滅することを公約の1つに掲げ、第5代大統領に就任している(2017年12月19日記事参照)が、今回の事件が12月のANC総裁選挙にどの程度影響を与えるか注目される。なお、南アでは2024年に国民総選挙も予定されている。

(堀内千浪)

(南アフリカ共和国)

ビジネス短信 26e937812b962499