サービス輸出にインセンティブ、外貨を手元に留保できる新制度を導入

(アルゼンチン)

ブエノスアイレス発

2022年06月07日

アルゼンチン中央銀行は6月2日、中銀通達A7518PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を公布し、非居住者に対してサービスを提供する(サービスを輸出する)自然人および法人が、国外から受け取る報酬の一部を外貨のまま留保できる制度を導入した。6月3日から施行。

対象となるサービス輸出は次のとおり。

  • 保守・修理
  • 建設サービス
  • 電気通信サービス
  • 情報処理サービス
  • 情報サービス
  • 知的財産権使用料
  • 研究開発サービス
  • 法務・会計・経営サービス
  • 広告宣伝、市場調査、世論調査サービス
  • 建築、エンジニアリング、その他の技術サービス
  • ビジネス関連サービス
  • その他ビジネスサービス
  • 音響、映像関連サービス
  • その他の個人・文化・娯楽サービス(教育を含む)
  • その他の医療サービス

アルゼンチンではこれまで、サービス輸出により外国から受け取った報酬は全額、国内の外国為替市場で現地通貨ペソに交換する必要があった。そのため、国外に銀行口座を持つ個人の場合は、国外にある口座で報酬を受け取るなどしていたとみられる。

今回の制度の導入により、自然人の場合は年間1万2,000ドルを上限に、外国為替市場でペソに交換することなく、外貨のまま国内の銀行口座に留保することが認められた。この制度を利用するには、過去90暦日以内に有価証券の取引を通じた外貨の購入、売却を行っていないことが条件となっている。アルゼンチンの債券・株式市場においてペソで取引可能な有価証券(主に国債)を購入し、その後、その債券を国外において米ドルで売却する、あるいはその逆の取引により国内においてペソで売却する取引がこれに該当する。

法人の場合は、(1)2022年と2021年のサービス輸出額の差額の50%と、(2)制度利用の前月に従業員に支払われた総報酬額の20%に相当する額に年末までの残り月数を乗じた金額を、インターバンクレートでドル換算した金額と比較し、いずれか少ない方の金額を上限に、国外から受け取ったサービス輸出の対価を外貨のまま留保することができる。ただし、手元の外貨の使途は従業員への報酬の支払いに限定されており、手元の外貨を残して年を越した場合は全て外国為替市場でペソに交換する必要がある。自然人の場合と同様に、過去90暦日以内に債券や証券取引を通じた外貨の購入、外貨の売却を行っていないことが条件となっている。

(西澤裕介)

(アルゼンチン)

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