EU首脳、パイプライン経由を除くロシアからの原油輸入の禁止に合意

(EU、ロシア)

ブリュッセル発

2022年06月01日

欧州理事会(EU首脳会議)の特別会合が5月30~31日、ブリュッセルで開催された。1日目の30日にはウクライナ情勢、中でもロシアに対する原油などの禁輸措置が議題となり、パイプラインによる輸入を除くロシア産原油および石油製品の輸入禁止に原則として政治合意に達した。

EUはこれまでロシアのウクライナ侵攻に対し5つの制裁パッケージを発動している(2022年4月11日記事参照)。ロシア産原油の禁輸措置は、欧州委員会が5月4日に提案した制裁パッケージ第6弾に含まれるものだが、一部のEU加盟国の反対により同パッケージはEU理事会(閣僚理事会)での採択に進めない状況が続いてきた。特に、ロシア産原油への依存度の高いハンガリーが難色を示していたが、今回、海上輸送による原油輸入は禁止する一方でパイプラインを通して輸入される原油は一時的に例外扱いされることで、政治合意に至った。欧州理事会のシャルル・ミシェル常任議長は31日未明の声明で「今回の制裁措置により、EUに輸入されるロシア産原油の75%が即時に禁止の影響を受け、さらに年末までにはこの割合は90%近くにまで達する」と述べ、禁輸がロシアの資金力を大きく低下させるものだと強調した。他方、ハンガリーのオルバーン・ビクトル首相は「合意により、ハンガリーは原油の禁輸措置から免除されることなった」とEU側から全面的な譲歩を得たという見方を示した。

今回の政治合意を受けて、EU理事会では6月1日に大使級の常駐代表委員会(COREPER)会合を開き、第6弾パッケージの正式採択を目指す。パッケージには、ロシア最大手の銀行ズベルバンクを含む3行の国際銀行間通信協会(SWIFT)システムからの排除や、ロシア国営メディアによるEU域内での報道の禁止などが含まれる。

食糧安全保障やエネルギー政策についても議論

特別会合2日目の31日もウクライナ情勢に関連して、食糧安全保障、安全保障・防衛、エネルギー政策の3分野が議論された。31日の会合後に採択された欧州理事会の総括文書外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますでは、食糧安全保障については、ロシアに対し黒海沿岸を経由した食品輸送の妨害を止めるように求めた。エネルギー政策では、欧州委が発表した「リパワーEU」計画(2022年5月20日記事参照)および短期的なエネルギー市場介入案など(2022年5月24日記事参照)の方向性に沿い、(1)短期的には燃料調達の多角化とエネルギー価格の安定を優先課題とすること、(2)再生可能エネルギープロジェクトの加速化、(3)加盟国間の状況に配慮しつつエネルギー効率の向上を図ること、(4)欧州域内のガスおよび電力の相互利用のためのネットワーク整備、といった諸課題に取り組むことを確認し、EU理事会に対し、リパワーEU計画に関連する欧州委の各種法案を速やかに審議するよう求めた。

(安田啓)

(EU、ロシア)

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