SPIEF2022でロシア政府と企業がESGの課題を議論

(ロシア)

欧州ロシアCIS課

2022年06月28日

ロシアの主要な経済イベントであるサンクトペテルブルク国際経済フォーラム(SPIEF2022)(2022年6月21日記事参照)でESG(環境・社会・ガバナンス)の新しい方向性が議論された。

環境面では、ロシア最大手行ズベルバンクのESGシニアバイスプレジデントであるタチアナ・ザビヤロワ氏が6月16日、「グリーンエネルギー、新時代の課題」のセッションに登壇した。ロシアの主要貿易相手国における炭素規制の強化は、ロシアが脱炭素化を推進するための重要な要因だと強調した(ズベルバンク6月16日)。「国際炭素取引におけるロシアの可能性」のセッションには、ガスプロムバンクのエレーナ・ボリセンコ副会長が登壇し、「脱炭素社会に向けて多くの国を巻き込み、ロシアの炭素取引市場の開発を進めていく必要がある」と発言。ルスラン・エデリゲリエフ気候問題担当大統領特別代表は「ロシアにとって国際市場が閉ざされたため、これからは中国や新しいパートナーに焦点を当てることになる。国際的な枠組みに参加できないのであれば独自の指標をつくる」と説明した(「ベドモスチ」紙6月16日)。

社会面では、企業の社会的責任について意見が交わされた。6月16日に開催された「Sの再起動:新しい現実の中で社会プログラムはどう変わるか?」のセッションで、全国ESGアライアンスの事務局長を務めるアンドレイ・シャロノフ氏は、遠隔地にある企業では熟練労働者や従業員教育が不足している、と報告。ロシア鉄道のドミトリー・シャハノフ副社長は、自社の社員教育制度や、極東地域での社宅整備の取り組みを紹介した。

ガバナンス面では6月17日、「国家グリーン基準、言葉から行動へ」のセッションに登壇した、ロシア中央銀行のウラジーミル・チスチュヒン第1副総裁が「現在、多くの企業が制裁に影響する可能性がある情報開示を停止している。これは正しい対応だが、企業が追加的な制裁の中で非財務情報の開示をどの程度できるか検討している」と発表した。

他方で、6月15日の「サステナビリティの変革、グローバルな課題 VS グローバルな機会」セッションに登壇した、デジタル・技術発展担当大統領特別代表のドミトリー・ペスコフ氏は、世界で掲げられているESG目標はロシアに適していないものもあると発言。農業の持続可能性の向上、移民問題の解決、新世代医薬品開発については、ロシア独自の目標を設ける必要があると異議を唱えた。

(小野塚信)

(ロシア)

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