フィンランド企業が相次いで撤退、消費者に大きな混乱はなし
(ロシア、フィンランド)
欧州ロシアCIS課
2022年05月24日
フィンランド企業が相次いでロシア市場からの撤退や活動停止などに動いている。ロシアに進出しているフィンランド企業の中で最大の売上高を誇る電力大手フォータムのほか、タイヤ製造のノキアンタイヤや不動産開発大手のYIT、製紙トップUPMなどの大企業がロシア事業の売却や新規投資の停止、出荷停止などを決定している。在サンクトペテルブルク・フィンランド総領事館によれば、ロシア進出フィンランド企業は2021年末時点で300社あった(「実業ペテルブルク」紙5月20日)。5月17日に在ロシア欧州ビジネス協会が開催したセミナーによると、今後2年以内に50社にまで減る可能性があるという。
サンクトペテルブルクでも企業撤退の動き
フィンランドとの国境に近く、交通の便も良いことから、ロシアの中で特に同国との結びつきの強いサンクトペテルブルクでも同様に企業の撤退が進んでいる。市内でスーパーマーケット「プリズマ」16店舗とホテル「ソコス」を運営するエスグループが、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻開始直後の3月初旬にロシアからの撤退を発表したのを皮切りに、市内に3つのパン工場を有し、サンクトペテルブルク市場では4割に近いトップシェアを占めるファッツェルも撤退を発表し、4月29日に、ロシア子会社売却についてモスクワのパン・菓子メーカー「コロメンスキー」と合意したと発表した。塗料大手ティックリラは、ロシアへの新規投資を停止するとともに市内の3工場の事業を縮小する。モスクワの自社工場での生産に加え、サンクトペテルブルクでも乳製品を委託生産するバリオは4月末、ロシア企業に国内事業を売却する交渉が完了したことを発表した。
複数の消費財メーカーが撤退に動く中、今のところ消費者の間に特に混乱は生じていない。ファッツェルの工場は「フレブニー・ドム(ロシア語で「パンの家」の意味)」ブランドとして、パンの製造を既に開始している。同社のチョコレートは、ロシアへの入荷が停止されていることから今後品薄になることが予想されるが、現時点ではこれまでどおりにスーパーマーケットに陳列されている。また、バリオがロシアで生産・販売してきたチーズ「ビオラ」は、同社の国内事業を買い取った企業のもとで生産する権利が与えられており、消費者にとって見た目のうえでは大きな変化はなさそうだ。
【欧州ロシアCIS課】
(ロシア、フィンランド)
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