欧州委、垂直的制限に関する一括適用免除規則を採択、電子商取引への対応強化

(EU)

ブリュッセル発

2022年05月16日

欧州委員会は5月10日、電子商取引の進展などに対応すべく、EU競争法における垂直的制限に関する一括適用免除規則の改正規則外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますの採択と改正規則に関するガイドラインPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を発表(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)した。改正規則は6月1日から適用が開始される。EU競争法は、競争を制限する事業者間の合意を原則として禁止している。一方でメーカーなどの供給者と、販売店などの購入者といったサプライチェーンの異なるレベルで活動する事業者間の合意(垂直的協定)は、本規則により、一定の条件で競争法上の禁止規定の適用を一括免除している。

主な変更点としてはまず、「二重流通」における適用免除の範囲の拡大が挙げられる。現行規則では、競合関係にある事業者間の合意は免除の対象外としているが、二重流通と呼ばれる、メーカーが販売店などの購入者に対してだけでなく、最終消費者に対しても商品を直接販売し、かつメーカーと販売店が製造の段階において競争関係にない場合には、当該事業者間の合意に免除が適用できる。改正規則では、対象となる供給者は、メーカーだけでなく卸売業者、輸入業者も含むとし、上流において購入者と競合しない限り、当該事業者間の合意には免除が適用可能としている。ただし、供給者と購入者間のこうした合意の履行や生産・流通の改善に関係のない情報交換に関しては、この限りではない。

また、競争を著しく制限することから免除の対象外となる「ハードコア制限」の内容も修正される。現行規則では、供給者が、販売店の販売地域や対象顧客を制限する独占的流通システムを構築することは、特定の場合を除き、ハードコア制限に当たる。しかし、改正規則では、最大で販売店5社までであれば、独占的な流通システムの構築はハードコア制限に当たらない。供給者が、販売店だけでなく再販売先に対しても、販売地域や対象顧客に関して一定の販売規制を課すこともハードコア制限に当たらないとしている。

さらに、現行規則では、供給者が販売店などの購入者に対してオンライン販売用と店舗販売用とで同一商品に異なる価格や異なる基準を設ける行為はハードコア制限に当たる。しかし、オンライン販売は十分に一般化しており、オンライン販売に対する保護的な規制は不要であることから、こうした行為は今後、ハードコア制限に当たらないとしている。一方、購入者やその顧客に対する、オンライン広告の制限を含めた、販売目的でのインターネットの活用の制限はハードコア制限に当たるとしている。

オンライン仲介サービスへの規制を強化

今回新たに、供給者にオンライン仲介サービスの提供事業者(以下、仲介事業者)が含まれることが明記された。仲介事業者と当該サービスにおける出品者が、商品やサービスの販売において競合する場合、当該事業者間の合意は免除の対象外となる。さらに改正規則では、仲介事業者が、当該サービスにおける出品者が競合する他社のオンライン仲介サービスにおいて、より好条件での販売をしないよう、出品者に対して義務づける合意は、免除の対象外となる。ただし、仲介事業者(例えばホテル予約サイト)が、出品者の直販ウェブサイト(例えばホテルの公式サイト)と同一条件あるいはそれ以上の条件での販売を、出品者に対して義務付ける合意は引き続き免除が適用可能となる。

(吉沼啓介)

(EU)

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