食糧や重要農産品の供給確保へ取り組み強化

中国政府は、糧食（注1）と重要農産品の安定供給確保に向けた取り組み姿勢を強めている。4月20日に開催された国務院常務会議では、糧食の十分な収穫量や重要農産品の安定供給の確保に向けて、春季の農業生産が適切に行われるよう、対策の実施を決定した。

常務会議では、糧食などの重要農産品の生産・供給の安定化は経済や社会の大局の安定、特に物価の安定や民生の保障の「安定装置」であり、国際的な糧食市場の不確実性の高まりや、一部の国々が直面しているインフレ状況下では特に重要との認識を示した。一方、中国の糧食の供給・備蓄は十分にあり、2022年春季の作付けも安定的に進み、糧食の安全保障は担保されているとしている。

春季の農業生産と、通年での糧食の十分な収穫量の確保に向けて、常務会議では以下の対策の実施を決定した。

1.通年の糧食の作付面積・生産量を（地方の）各レベルに下方展開し、各地域で適切な時期に作付けを行うよう促し、任務が完了しない場合は責任を追及する。糧食の安全保障の責任を厳格に実行し、新型コロナウイルス感染防止と春季農業生産の統一的かつ適切な実施を（政府関係者の）人事評価の重点とし、統一的かつ調整を図った上で、春季の農業生産、農業資材の供給の保障や価格の安定、農産品の生産と販売間のマッチングを適切に実施する。夏季収穫の糧食については、水田の管理指導を強化し、農業災害を有効に防止する。新型農業経営主体（注2）の役割を発揮させ、代理作付け・代理耕作サービスを提供し、小規模農家や新型コロナウイルスの影響を受けた農家が耕作を継続できるよう支援する。

2.春季耕作、農業関連活動の秩序ある展開をしっかりと保障する。（1）農村外に居住する農民が農作業実施時期に故郷に戻り農作業を行うこと、（2）農業資材を適切に供給すること、（3）農業機械を（円滑に）通行させること、（4）農業技術者が現場でサービスを展開することについて、時期を逸することなく実施する（注3）。また、農業資材企業の生産・原材料、エネルギーの供給を保障する。

3.農産品の輸送グリーンルート政策を実施し、野菜などの農産品のスムーズな流通を促進する。

4.各種の農業支援策を実施し、糧食生産支援に関する資金をできる限り早期に農民に支給するとともに、小麦に関する新たな補助政策を実施する。

5.農業資材に対する補助拡大策の拡大を研究し、糧食の買い上げを適時適切に行い、農民の糧食作付けに向けた積極性を保護・喚起する。

（注1）中国で用いられている概念。コメ、小麦、トウモロコシなどの穀物に、豆類、イモ類を含める。

（注2）専業化、集約化、組織化された農業生産経営組織形態

（注3）新型コロナウイルス感染拡大を防止するべく、一部の地方政府は農村部を封鎖する動きがあり、農業活動にも影響が出ている。

（中井邦尚）