全米の車両走行距離が新型コロナ感染拡大前上回る、航空需要も9割まで回復

(米国)

ニューヨーク発

2022年05月24日

米国運輸省連邦高速道路局は5月19日、3月の全米の車両走行距離が2,774億マイル(約4,464億キロ)となりパンデミック発生前の2019年3月の2,724億マイル(約4,383億キロ)を超えたことを明らかにした。年初からの比較でも新型コロナウイルスの流行前の水準を上回り〔2022年:7,537億マイル(約1兆2,130億キロ)、2019年:7,531億マイル(約1兆2,120億キロ)〕、足元で米国の新型コロナウイルス感染は拡大傾向にあるが(2022年5月19日記事参照)、移動の観点からは正常化が引き続き進んでいる。

当該データは、全国約5,000の定点観測地点から得た交通量を基に推計によって算出された値。2,774億マイルの内訳として地方道路が841億マイル(約1,353億キロ)、都市部の道路が1,933億マイルとなっている(約3,111億キロ)。2022年3月単月の走行距離に加え、年初来の累計と過去12カ月間の走行距離の全てにおいて、1997年以降で過去最高を記録した(添付資料表参照)。

航空需要の回復も進んでいる。国土安全保障省運輸保安局によると空港利用者数は4月以降、2019年の同時期に比べて9割まで回復、特に最近はビジネス出張の需要回復が顕著に見られる。アメリカン航空によると、ビジネス出張の予約は2019年の水準から80%まで回復したとしており、その他の航空会社やホテルもビジネス出張の急増を報告している(「ニューヨーク・タイムズ」紙電子版5月15日)。日本をはじめ各国が水際対策の緩和を進めていることを踏まえると、これまで低調だった海外からの出張者も徐々に増加していると考えられる。

正常化が進む一方で、懸念されるデータも示されている。米国運輸省全国高速道路交通安全局によると、2021年の交通事故者数は約4万2,900人と、2005年以降で最多、前年比では10.5%増加しており、これは統計開始以来、年間の増加率としては最大となっており、運転距離の増加による影響が鮮明となっている。加えて、移動需要の高まりによる物価への影響も顕著だ。5月20日時点で1ガロン(約3.8リットル)当たりのレギュラーガソリン全国平均価格は4.59ドルと、連日過去最高を記録している。航空運賃も4月に前月比18.6%上昇しており、物価への上昇圧力がかかる。連邦準備制度理事会(FRB)はインフレを抑制するために金融引き締めを急ぐが(2022年5月6日記事参照)、急ぐあまり景気を減速させすぎる懸念も市場にはくすぶる。回復を続ける需要を抑えすぎることなく、経済を軟着陸させられるか、FRBの今後の金融政策のかじ取りに注目が集まる。

(宮野慶太)

(米国)

ビジネス短信 e5c163623252cd63