2021年のシード期の資金調達額は増加、2022年は投資確保が課題に
(英国)
ロンドン発
2022年05月09日
英国のデータプラットフォーム企業のボーハースト(Beauhurst)は4月26日、2021年の同国のスタートアップのシードステージ(立ち上げ期)の初回資金調達(first-time seed-stage deals、以下、初回資金調達)の動向をまとめたレポート「First-time Deals 2021 Trends」を公表した。2021年の初回資金調達件数は前年比20件増の1,635件にとどまった一方、全体の調達額は前年に比べて大きく増加し13億ポンド(約2,119億円、1ポンド=約163円)となった。
内訳をみると、インターネットプラットフォーム、モバイルアプリ、SaaS(サービスとしてのソフトウエア)、分析ツールなどを提供するスタートアップが多い。一方、新型コロナウイルス感染拡大などの影響で、リスク回避のため、限られた事業に投資が集中したとされている。2022年の予測については、2020年以降好調を見せる企業設立の流れを受けた潜在的な資金需要がある一方、適切な水準の資金供給を確保することが極めて重要で、個人投資家へのシード企業投資スキーム(SEIS)の利用支援が肝要とした。一方で、インフレ率の上昇などマクロ経済環境は悪化するとみられ、立ち上げ間もない企業への支援が一層重要となるとした。
英国政府は中小企業などの成長を支援し投資を促進させるため、新規株式、債券、資産を購入・所有するベンチャーキャピタルに対して税制上の優遇措置を実施している。特に設立2年未満かつ総資産20万ポンド以下かつ従業員数25人未満などの条件を満たすシード期のスタートアップ向けのSEISは、準備段階の資金調達を支援し、多くのスタートアップの発展を可能にするとされている。一方、経済情勢の変化に伴い、次世代のスタートアップのニーズに対応するために、SEISをさらに拡大する必要があるとの指摘もある。
直近の英国でのシードラウンドでの資金調達事例としてはカナダのモントリオール大学と共同でがん免疫治療法を開発するエピトピア(Epitopea)が、4月25日に1,030万ポンドの資金調達を発表。経営陣の強化やさらなる研究に利用するとしている。ロンドンで中小企業向けに顧客への翌日配達サービスを提供するパックフリート(Packfleet)
も4月6日、800万ポンドの資金調達を発表している。テック企業向けに給料や福利厚生などの報酬データを提供するラビオ(ravio)
も4月27日、1,000万ドルの資金調達を発表している(「テック.eu」4月27日)。
(島村英莉)
(英国)
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