裁判官任免への与党の影響力拡大に懸念の声
(アルゼンチン)
ブエノスアイレス発
2022年05月09日
アルゼンチンの司法審議会の委員定数を20人から13人に減らすことを定めた法律26,080号が4月16日に無効となり、定数は再び20人に戻った。7人増えたことで、新たな委員の任命をめぐり、与党による司法への影響力拡大や与党議員が汚職問題などで訴追を免れることを懸念する声が上がっている。
2006年2月に公布された法律26,080号では、司法審議会の委員定数について、裁判官3人、上院議員3人、下院議員3人、法曹界2人、行政府1人、学術界1人の合計13人と定めた。上下院からの委員は国会議員が選定する。上下院の最大会派からそれぞれ2人、第2会派から同1人を選ぶ。法律26,080号以前は、最高裁判所長官1人、裁判官4人、上院議員4人、下院議員4人、法曹界4人、行政府1人、学術界2人の合計20人で構成され、上下院の委員は上下院それぞれの最大会派から2人、第2会派から1人、第3会派から1人が選出されていた。
法律26,080号をめぐっては、委員の定数が7人減っても、上下院の最大会派である与党が人数を2人に維持したことから、法曹界は、法律26,080号が憲法第114条の定める「司法審議会委員は立法、司法、法曹界の均衡を保つよう構成する」に違反するとして、訴訟を提起していた。
これを受けて最高裁は2021年12月16日、「裁判官の任命、罷免を行う司法審議会の委員定数の削減を定める法律26,080号は憲法違反」との判決を示し、司法審議会の不均衡を4月15日までに是正することを国会に勧告。ただ、新たな法律は作られずに法律26,080号は無効となり、司法審議会の定数は再び20人に戻るかたちになった。
そうした結果、4月16日以降、上下院からもう1人ずつ追加で委員を選定する必要が生じ、上院からは第3会派で与党連合「全ての戦線」(FdT)から1人、下院からは野党連合「変革のためにともに」(JxC)の一角を占める第3会派の「急進市民同盟」(UCR)の議員1人が選出された。
本来ならば、上院も第3会派の野党議員が選出されるはずだったが、与党連合「全ての戦線」(FdT)は、上院で会派を分割することで第1会派、第3会派となり、自らの議員を司法審議会に新たに送り込んだ。
一連の動きを受けて国内では、司法への与党の影響力拡大を懸念する声が上がっている。
司法をめぐる与党の動きを批判するデモがブエノスアイレス市内で行われた(ジェトロ撮影)
(西澤裕介)
(アルゼンチン)
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