連邦ネットワーク庁、緊急時の天然ガスの配給方針を発表

(ドイツ、ウクライナ、ロシア)

デュッセルドルフ発

2022年05月27日

連邦ネットワーク庁は5月17日、緊急時におけるガスの配給に関する方針外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。ロシアからの天然ガスの供給停止などにより、「ガスに関する緊急計画」(2022年4月12日記事参照)の最終段階の「緊急(emergency)」が発令された場合の方針や措置をまとめたもの。今後も政治や関係省庁、経済団体、労働組合、市民との対話を通じて継続的に更新する予定。

発表によると、今後数週間以内に「緊急」が発令された場合は、連邦ネットワーク庁が天然ガスの配給先を業種によって区別し配給する。中長期的な対応が必要となる場合、天然ガス配給の優先度は経済的・生態学的・社会的な影響も考慮し判断する予定。

具体的には特に以下の基準が考慮される予定。

  • 天然ガス不足による緊急度
  • 設備・工場の規模や天然ガスの消費量
  • 天然ガス供給削減・製造設備の停止期間、供給網の調整に必要な時間
  • 予想される経済的・経営的損害
  • 天然ガス供給不足による操業停止後の再稼働にかかる費用や期間
  • 社会全体における重要度

なお緊急時の措置としては、まずは天然ガスの国内での生産増、火力発電所や最終消費者における天然ガスの代替、天然ガスのさらなる輸入、システム上重要ではない火力発電所における天然ガスの供給量削減などを挙げた。またその後の措置としては、保護の対象となる配給先を決定した上、保護対象ではない供給先への天然ガスの供給量削減、貯蔵設備からの利用、他国への輸出禁止などが挙げられた。さらに、最終的には保護対象となる配給先や重要とされる火力発電所への天然ガスの配給量削減も考慮されるとした。

連邦ネットワーク庁のクラウス・ミュラー長官は5月17日、「フランクフルター・アルゲマイネ」紙に対し、緊急時において保護の対象となる天然ガスの配給先には、消防隊、病院、警察、学校、保育園、連邦軍のほか、全ての一般家庭が含まれると述べた。また、パン屋やスーパーマーケットなどで、年間150万キロワット時以下の天然ガスを消費する企業も含むと加えた。他方で、プールなどのレジャー施設は保護対象には含まれないと指摘した。なお連邦ネットワーク庁は、天然ガス配給の優先順位については状況に応じて措置を取る必要があるため、個々の消費者や業種に対する確定した順位はないと強調している。

(ベアナデット・マイヤー、作山直樹)

(ドイツ、ウクライナ、ロシア)

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