2022年に入り米国産の天然ガス輸入急増、アルジェリア抜き期間トップに

(スペイン、米国、アルジェリア、モロッコ)

マドリード発

2022年05月06日

スペインの天然ガス網管理会社エナガスの統計(4月8日発表)によると、スペインの2022年1~3月の天然ガス輸入量〔約11万ギガワット時(GWh)〕のうち、米国からの輸入が前年同期の5.8倍に急増し、輸入全体に占めるシェアは過去最高の37%となった。一方、従来の主要調達先アルジェリアは36.7%減少し、シェアは輸入全体の26%まで低下(添付資料図参照)。これにより、輸入全体に占める液化天然ガス(LNG)の割合は前年同期の5割弱から7割に拡大し、供給構造の変化も起こっている。

米国産LNGの輸入急増の背景にある要因は、アルジェリアとスペインを結ぶ2本のガスパイプラインのうち、モロッコを中継する「マグレブ・ヨーロッパ」パイプラインが、アルジェリアとモロッコの断交によって2021年10月末で停止したことだ。

アルジェリアは、稼働停止によるスペインへの供給不足分について、もう1本の「メドガス」パイプラインの輸送能力拡張やLNG輸出で確保すると約束した。しかし、スペインのガス大手は米国産LNGで代替調達を行う動きを見せている。米国のシェールガス価格は欧州のベンチマーク価格と比べて大幅に低い水準で推移してきたため、当地各紙によると、タンカー輸送費を考慮してもアルジェリア産LNGより安価に調達できているという。

スペインは従来、天然ガスの約4割を安価なアルジェリア産に依存してきたが、北アフリカでも地政学的緊張が高まる中で依存軽減を試みている。3月下旬にはEUがロシア産エネルギー依存からの脱却を目指して、米国と天然ガスの追加供給合意を交わしており、足元の米国産輸入の拡大はその流れにも沿っている(2022年3月28日記事参照)。

また、スペインが3月中旬、旧スペイン領西サハラの領有権をめぐり、モロッコによる自治計画の支持に方針転換したことで、同地域の独立派武装組織を支援するアルジェリアは強く反発し、駐スペイン大使を召喚するなど両国関係は急速に悪化。4月初旬には同国の国営炭化水素公社ソナトラック社長が「天然ガス供給価格はおおむね維持するが、スペインの顧客に関しては見直しの必要がある」と発言するなど、アルジェリアからの安定的な価格での調達が危ぶまれる状況も生じている。

モロッコにLNGを逆送

スペインは欧州有数のLNG受け入れ基地インフラを整備しているが、フランスと連結するパイプラインの輸送能力が低く、現時点で進行中の欧州向け大型パイプラインプロジェクトもないため、短中期的に欧州の天然ガスハブとなる可能性は低い。

その一方で、アルジェリアとの断交によって天然ガス供給を停止されたモロッコへの供給計画が具体化している。モロッコ政府は 4月15日、当面はスペインの受け入れ基地を通じてLNGを輸入して再ガス化した上で、同パイプライン経由でスペインからモロッコに逆送するかたちで供給を受けることを明らかにした。

(伊藤裕規子)

(スペイン、米国、アルジェリア、モロッコ)

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