ブラジル農家の肥料購買力、ウクライナ情勢の影響で悪化

(ブラジル、ロシア、ウクライナ、ベラルーシ)

サンパウロ発

2022年05月31日

5月17日付現地紙「バロール」によれば、米国大手肥料メーカーのモザイクは、ブラジル農家の肥料購買力指数(IPCF)(注1)を更新し、ロシアがウクライナへの軍事侵攻に踏み切った2月以降、農家が肥料を購入するのが難しくなっている状況を示した。

同指数は、モザイクが毎月発表している。数値が高くなるほど、ブラジル農家の肥料購買力が低下していることを示す。ブラジルで使用される肥料の約85%は海外からの輸入に依存しており、その主な輸入元にはロシアやベラルーシが含まれる(2022年3月22日記事参照)

ブラジル農家の肥料購買力指数(IPCF)は、2022年1月が1.50ポイント、2月は1.27ポイント、3月は1.56ポイント、4月は1.87ポイントと、2月以降悪化している(添付資料図参照)。モザイクはこの変化について、ロシアによるウクライナへの軍事侵攻や、ベラルーシへの経済制裁などにより、ブラジルが十分な供給量を確保する見通しが不透明になったことが要因と分析した(現地紙「バロール」5月17日)。

経済省貿易統計(COMEXSTAT)によると、2022年2月から4月までの間にブラジルがロシアから輸入した肥料(重量ベース)は、前年同期比では減少していないものの、4月29日付現地紙「エスタード」では、「4月上旬までにロシアから到着した肥料の多くはロシアによるウクライナへの軍事侵攻以前に発注されたものがブラジルへ到着したにすぎない」と報じられている。4月19日付現地紙「エスタード」によれば、ストーンXブラジル(注2)のマルセロ・メロ肥料コンサルタントは「ロシアからブラジルへの肥料輸送の実質的な影響は6月から9月の貿易統計に表れる可能性がある」と分析している。

(注1)IPCFとは、肥料価格とブラジルの主要作物である大豆、トウモロコシ、砂糖、サトウキビ、綿花の価格を比較し、農家の肥料購買力を表す指数。2017年がベースとなっており、1未満の数値の場合は2017年時点より農家の肥料購買力が高いことを示す。1より大きい数値になれば、2017年時点より農家の肥料購買力が低くなっていることを示す。

(注2)オランダ系農業融資機関のブラジル支店。

(古木勇生、エルナニ・オダ)

(ブラジル、ロシア、ウクライナ、ベラルーシ)

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