トラック運転手らが主要道路を封鎖、南部の治安悪化が発端に

(チリ)

サンティアゴ発

2022年05月02日

チリを南北に横断する主要道路(la Ruta 5 Sur)を封鎖する大規模なデモが4月26日、国内のトラック運転手らによって実施された。同デモは、4月22日に南部アラウカニア州エルシージャにおいて、トラック運転手が何者かに銃撃され、重症を負った事件が発端となっている。デモ参加者は、トラック運転手並びに主要道路の安全保障、上昇を続ける燃料価格の引き下げ、高速料金の引き下げなどを要求している。政府は彼らとの対話を望むと発表し、封鎖された道路の開放を訴えたが、要請に従わなかったデモ参加者らに対しては、国家安全保障法に従い、9件の苦情の申し立てを行った。

今回トラック運転手の襲撃現場となったアラウカニア州は、ビオビオ州と共に、先住民族マプチェ族が多く居住している地域で、これまで長きに渡り、先住民族と近隣住民およびチリ警察との間で対立が生じていた。先住民族は彼らの領土保有を主張し、たびたび近隣住民らへ襲撃や放火を繰り返しており、治安悪化を危惧した当時のセバスティアン・ピニェラ大統領は、2021年10月12日に対象地域に対して緊急事態宣言(Estado de Excepción Constitucional de Emergencia)を発令した。同宣言は2022年3月26日まで続いたが、3月11日に就任したガブリエル・ボリッチ大統領は、あくまで先住民族との対話によって同地域の紛争を解決するとし、同宣言を延長しない決定を下した。これにより同地域に配備されていた約2,000人の軍が撤退することとなったが、4月27日付「エル・メルクリオ」紙は、緊急事態宣言下と解除されてからの30日間を比較し、同地域における暴力行為が2.7倍(26件から70件)に増加したと報じている。

また、直近では2月に、不法移民によるトラック運転手殺害事件が起こったことで、チリ北部の主要道路が封鎖されたばかりで(2022年2月25日記事参照2022年4月21日記事参照)、治安悪化に対する国民の不満が増大傾向にある。

(岡戸美澪)

(チリ)

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