通商政策方針に関する市民参加型協議の実施を発表

(チリ)

サンティアゴ発

2022年05月18日

外務省国際経済関係次官官房(SUBREI)は5月9日、今後のチリの通商政策を位置付けるための市民参加型協議の実施を発表した。本協議は2022年8月から10月にかけて実施予定で、「現状の通商政策に関する市民の声に耳を傾け、今後の政策決定に資する提案を得る」「高い生産性、持続可能性のある環境、社会の多様性と平等の促進を伴う開発を実現するための通商政策を設計する」という2つの目標が掲げられている。続く第2段階として、協議を通じて得た情報を取りまとめるコンサルティングチームを起ち上げ、政府への通商政策設計に係る提案を含んだ報告書が提出される。

同様の市民参加型プロセスの先行事例として、SUBREIは2018年にニュージーランドで実施された「Trade For All外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を紹介している。また、当時の経験やグッドプラクティスの共有という形で、同国政府がチリへの協力を表明している旨を伝えている。

しかしながら、本発表の後、中道左派政権時代の元外相や中道左派政党の議員、ガブリエル・ボリッチ大統領と2021年の大統領選を争ったホセ・アントニオ・カスト氏らによる批判が相次いだ。中心となったのは、通商協定の内容に十分に通じていない市民を参画させる点への疑問や、従前長きにわたって貿易と投資の自由化を基本方針として発展を遂げてきたチリの歴史を軽視しているのではないか、という意見だ。さらには、現政権内の重鎮の1人であるマリオ・マルセル財務相が「本発表内容について、事前の情報共有は受けていない」「現行の通商協定は、民主的に選出された議員が構成する議会の承認によって批准されたもので、今後も同様の手法を用いることで問題はないだろう」と発言し、メディアの注目を集めた(「La Tercera」紙5月11日)。

一連の騒動を受け、アントニア・ウレホラ外相は、本協議の結果が法的な拘束力などを持つことはなく、あくまでも意思決定を行うのは政府である点(「T13」5月12日)や、環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(CPTPP、いわゆるTPP11)などの特定の通商協定を念頭に置いて行われるものではない点(「CNN CHILE」5月13日)、に言及している。

(佐藤竣平)

(チリ)

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