政府、自動車を含む33品目の輸入を禁止

(パキスタン)

カラチ発

2022年05月24日

パキスタン政府は5月19日、外貨準備を維持することなどを目的として自動車など33品目の輸入を即時禁止する政令(S.R.O. 598(I)/2022PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます))を発出した。輸入キャッシュ・マージン要求に続く輸入抑制措置(2022年4月15日記事参照)。期限は明示されていない。この政令発出以前に船荷証券(B/L)や信用状(L/C)が発行・開設されている輸入品については対象とならない。自動車については、乗用車の完成車(CBU)だけが対象となり、事前の報道とは異なり、日系企業に影響の大きいCKD(完全現地組立部品)とSKD(準現地組立部品)は対象とならなかった。

その他の主な輸入禁止品目は、携帯電話(完成品)、楽器、サングラス、旅行バッグおよびスーツケース、家電製品(完成品)、家具、靴、陶器製食器、衛生陶器、たばこ、化粧品類、食品(魚、菓子類、炭酸飲料、冷凍および加工肉、パスタなど)で、政府は「経済の非常事態でありやむを得ない措置。これらはぜいたく品で、一般大衆が日常使うものではない」と説明している。

パキスタン経済は危機に瀕している。「新型コロナ禍」後の旺盛な内需に原油や食料の国際価格高騰も手伝って輸入が急増。2022年3月までの直近9カ月間の貿易赤字は301億ドルと前年同期比で約1.5倍と過去最高を記録。それにともない経常収支も悪化。2021年7月~2022年4月の経常収支赤字は138億ドルとなり、前年同期の5億4,000万ドルの赤字額から急拡大した。為替レートの下落も止まらない。1年前に1ドル=150ルピー前後で推移していた中、5月19日には節目の200ルピーを突破した。中央銀行(SBP)の外貨準備も直近のピーク200億ドル(2021年8月)から5月13日には101億6,000万ドルに半減。これは、現在の輸入水準の約1.5カ月分で、最低の目安と言われる2カ月分をも下回る。

政府は5月18日、IMFと総額60億ドルの拡大信用供与(EFF、融資の一種)再開に向けた協議を実務レベルで開始した。報道などによるとIMF側はガソリン・軽油価格抑制の政府補助金廃止などの税収増に繋がる政策などとならんで、貿易収支の改善を要求しているとされる。

(山口和紀)

(パキスタン)

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