米ACEグリーンリサイクリング、北米最大ゼロ排出型バッテリー再生施設をテキサス州で建設へ

(米国)

ヒューストン発

2022年05月17日

電池リサイクル企業の米国ACEグリーンリサイクリング(本社:ワシントン州)は5月10日、北米最大規模となる、温室効果ガス排出をゼロとするバッテリーリサイクル施設をテキサス州に建設することを発表した。具体的な進出先については、現時点では明らかになっていない。

施設は40万平方フィート(約3万7,161平方メートル、甲子園球場1個分)で、2023年第3四半期から段階的に操業を開始する予定だ。鉛蓄電池のリサイクルから開始し、その後、近隣に設ける工場でリチウムイオン電池のリサイクルも行う。ACEは、2025年までにフル稼働体制に入り、年間で最大10万トンの使用済み鉛電池と、2万トンの使用済みリチウムイオン電池の処理、リサイクルを予定している。

バッテリーのリサイクルはこれまで、化石燃料を用いた高温での精錬処理が行われ、大量の温室効果ガスの排出を伴ってきた。これに対し、ACEのリサイクル処理は完全電化により炭素のゼロ排出を実現する。フル稼働時には5万トン以上の温室効果ガス排出を削減できるほか、1,000万ポンド(約4,536トン)以上の有害固定廃棄物の埋め立てを減らし、年間1,500万ポンド(約6,804トン)以上のプラスチックをリサイクルできるという。ACEは今後、工場の多くを太陽光発電で稼働させ、間接排出にあたるスコープ2排出(注)の削減を模索していくという。

ACEの共同創立者兼最高経営責任者(CEO)のニシチャイ・チャダ(Nishchay Chadha)氏は「テキサス州は、世界のエネルギー革命の中心にあり、優秀なエンジニアや技術者であふれている。ACEの新工場はこのエネルギー革命の一翼を担い、一層環境にやさしく、持続可能な未来を築くことを目指す」とコメントしている。

米国では現在、十分なリサイクル処理能力がないため、大量の使用済み電池をメキシコやアジアに輸出する一方、国内での電池生産には材料を海外から輸入する必要があり、これが価値の損失につながっていると指摘されている。ACEはテキサス州でのリサイクル工場の操業により、電池材料や電池の外国への依存低減に貢献することを目指している。

(注)事業者自らによる温室効果ガスの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス)であるスコープ1に対し、スコープ2は他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出を指す。

(桜内政大)

(米国)

ビジネス短信 9d8636d27707f3b2