国務院、個人年金の普及促進に関する意見発表

(中国)

北京発

2022年05月02日

中国国務院は4月21日、「個人年金の発展を推進することに関する意見外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を発表した。意見では、個人年金制度について、国民の多様なニーズに応えるため、多層的な養老保険制度体系を整備し、その持続可能な普及を促進するための方針を示した。

意見では、個人年金は基本養老保険に加入している労働者が任意で加入するものとし、保険料は完全積み立て方式で加入者本人が全て納付するとした。毎年の保険料の上限は1万2,000元(約22万8,000円、1元=約19円)とし、経済状況などに応じて適宜調整する。

運用については、個人口座制を取るとしている。具体的には、加入者が個人年金の情報管理サービスプラットフォームで自身の口座を開設することにより、銀行理財商品などの金融商品に投資することができる。また、年金の受給については、基本養老保険を受給する年齢になった場合、またはその他の規定に合致する状況になった場合は、個人年金を毎月か分割、あるいは一括で受け取ることができる。

財政部など5部門は個人年金の普及を促進するため、2018年5月から上海市、福建省、蘇州工業園区をモデル地域として「個人所得税繰延型商業養老保険」を試行している。このほか、銀行保険監督管理委員会は2021年6月から浙江省、重慶市で「専属商業養老保険」を試行し、2022年3月1日からは試行地域を全国に拡大した(「21世紀経済報道」4月22日)。

今回の意見では、個人年金制度について、基本養老保険、企業・職業年金を補完するものと位置付けている(注)。武漢科技大学金融証券研究所の董登新所長は「個人年金制度は、国民に対してより潤沢な老後の備えを提供すると同時に、積み立てられる資金が投資に回ることで実体経済を支える資金源にもなるため、実体経済への影響は非常に大きい」と指摘した。さらに、生産年齢人口が減少する中で、経済成長が鈍化し基本養老年金への財政負担が増大する中で、個人年金制度の導入は当該財政負担の軽減にもつながるとの見方を示した(「時代週報」4月22日)。

このほか、中国証券監督管理委員会は4月21日、個人年金による公募ファンドへの投資に関する制度・規則の策定を急ぐと発表した。

なお、意見では、個人年金制度は一部の都市で1年間試行した後、段階的に展開するとしていることから、今後は試行都市の選定や関連実施細則の策定が進むと見込まれる。

(注)中国の養老保険制度は、第1の柱である強制加入の基本養老保険(都市部で働く企業就業者や自営業者を対象にする都市従業員基本養老保険と都市戸籍の非就労者、農村部住民向けの都市・農村住民基本養老保険を含む)、第2の柱の任意加入の企業年金・職業年金、第3の柱の個人向けの商業保険の3つの柱から構成されている。

(張敏)

(中国)

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