健康的でない食品に関する規制の延期発表、店内配置規制は予定どおり導入

(英国)

ロンドン発

2022年05月23日

英国政府は5月14日、健康的でない食品に関する規制の導入を1年間延期することを発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。政府は意見公募を踏まえ、2021年6月から7月にかけて規制の導入に向けた計画を発表していたが、現在の経済状況を考慮し、企業の準備期間を設けるとした。延期が発表された規制は以下の2つ。

  • 高脂肪、高塩分、高糖分(HFSS、注1)の食品・飲料の「Buy One Get One Free」(1つ購入した場合もう1つ無料)、「3 for 2」(3つ購入した場合1つ無料)などの複数購入での割引販売を禁止する規制
  • 午後9時以前のテレビやオンラインでのHFSS関連広告を禁止する規制

割引販売の禁止は2022年10月から2023年10月へ、広告の禁止は2023年1月から2024年1月へと延期する。なお、同時に発表された健康的でない食品の配置に関する規制は、予定どおり2022年10月に施行するとしている。従業員50人以上の中堅・大企業の店舗で、面積が185.8平方メートル以上の場合、店舗の入り口、レジなど主要な場所へのそうした商品の配置を制限する。

政府によると、イングランドの成人の約63%、小学生の約40%が体重過多か肥満(注2)で、肥満に関連する症状により、国営医療サービス(NHS)が毎年61億ポンド(約9,699億円、1ポンド=約159円)の費用を負担している。新型コロナウイルスにより、肥満が健康に与える影響に注目が集まったことなども踏まえ、政府は国民の肥満解消に向けた取り組みを実施している。

2022年4月には、従業員250人超の企業の大型レストラン、カフェ、テークアウトでのカロリー表示に関する法律を施行。メニューや食品ラベルに、当該食品のカロリー情報と1日に推奨される摂取カロリーを表示することが義務付けられている。消費者への情報提供のほか、企業に対し、低カロリーのメニューの提供を促すことも狙いとしている。

食品・飲料連盟(fdf)の最高科学責任者ケイト・ハリウェル氏は、家計やメーカーがインフレに苦しんでいることを踏まえると、延期は理にかなっていると述べた。一方、食品・飲料大手のブリビックやケロッグ、マーズからは根拠を欠くとして批判が出ており、ケロッグは同社の一部製品が規制対象となっていることにつき、政府に対して裁判を起こすと発表した、と報じられている(「BBC」5月14日)。

(注1)HFSSの定義については政府ガイダンスの5ページ、6ページを参照外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

(注2)NHSの定義では、体重過多はBMI値が25~29.9、肥満はBMI値が30以上の人。

(島村英莉)

(英国)

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