中国、期間5年以上のローンプライムレートを引き下げ

(中国)

中国北アジア課

2022年05月23日

中国人民銀行(中央銀行)は5月20日、ローンプライムレート(以下、LPR)の期間5年以上を4.60%から4.45%に0.15ポイント引き下げると発表した。期間1年のLPRは3.70%で据え置いた。期間5年以上のLPRは住宅ローンなど中長期融資の基準になる。2022年1月20日以来(2022年1月21日記事参照)4カ月ぶりの引き下げとなった。中国人民銀行は毎月20日(注1)にLPRを公表している。

一部地域での新型コロナウイルスの感染拡大の長期化、それに伴う封鎖管理強化による物流や企業活動、消費行動への影響が懸念される中、中国人民銀行は4月15日に預金準備率の引き下げ(注2)を発表していた。市場関係者はLPRも引き下げられると予想していたが、4月の公表では期間1年、期間5年以上ともにLPRは据え置かれていた。

中国人民銀行は5月13日発表の4月の金融統計報告で、2022年1~4月の人民元貸出残高の増加額は8兆9,000億元(約169兆円、1元=約19円)で過去2番目に高い水準であるものの、4月単月の貸出残高の増加額は6,454億元と前年同月の1兆4,685億元と比較して減少したと指摘している。その背景として、中国人民銀行は、新型コロナウイルスによる実体経済への影響が鮮明になったことや原材料価格の上昇によるコスト増などにより、特に中小・零細企業の経営環境がより困難になったことを指摘している。あわせて、1~4月の法人向け貸出金利は4.39%と前年同期比0.25ポイント低下し、引き続き統計開始以来の最低水準にあるとしている。

足元の経済指標について国家統計局は、国際環境の複雑化・深刻化と国内の感染拡大から、予想を超えた影響を受けたことにより、中国経済の新たな下押し圧力が高まったとの認識を示しており(2022年5月20日記事参照)、今回のLPR引き下げもそうした認識を踏まえたものとみられる。

(注1)20日が休日の場合は翌営業日。

(注2)預金準備率が5%の金融機関を除き、4月25日より0.25ポイント引き下げ。経営範囲が1つの省に限られる都市商業銀行や農村商業銀行(預金準備率が5%を上回っているところ)は0.5ポイントの引き下げ。4月25日時点の金融機関の加重平均預金準備率は8.1%。預金準備率の引き下げを受けて、市中銀行が中国人民銀行に預け入れる資金が減少することで、貸出に充当する資金が増加することになる。

(亀山達也)

(中国)

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