ウクライナ情勢でさらなる経済課題に直面へ、シンガポール首相が警告

(シンガポール)

シンガポール発

2022年05月09日

シンガポールのリー・シェンロン首相は5月1日、メーデーの演説で国民に対し、ロシアによるウクライナ侵攻がもたらす経済的な課題に引き続き備えていく必要性を訴えた。

リー首相は、ウクライナ情勢が国内経済に与える直近の影響として、生活費の上昇を指摘した。統計局の発表(4月25日)によると、総合消費者物価指数(CPI)は2022年3月に前年同月比5.4%増と、2012年3月以来の上昇幅となった。同首相は生活費上昇の家計への影響を軽減するために、2022年度政府予算(同年2月18日発表)で「家庭サポート・パッケージ(注)」を導入したと述べた。また、シンガポール通貨金融庁(MAS、中央銀行に相当)は4月14日、金融の一段の引き締めを発表し、シンガポール・ドル高に誘導することで輸入インフレの軽減を図った(2022年4月15日記事参照)。しかし、同首相は、短期的に生活費上昇を軽減しても、長期的には根本的な解決にならないとの考えを示した。

ロシアやウクライナとの貿易は限定的だが、原油価格高騰の影響を受ける分野も

また、MASは4月28日発表のマクロ経済報告で、ウクライナ情勢や新型コロナウイルスの状況がこの先悪化しない限り、2022年通年のGDPが、公式な成長見通しである「3.0~5.0%」を達成すると述べた。同庁によると、シンガポールの全輸入に占めるロシアからの輸入の割合は0.8%、全輸出に占めるロシアへの輸出の割合が0.1%と、ロシアとの直接的な貿易関係は限定的だ。また、ウクライナとの貿易額はロシアを下回る。しかし、ウクライナ情勢の悪化などで世界的に急騰した原油価格によって、打撃を受ける産業もある。同国の石油化学産業の投入コストに占める原油・電力・ガスの割合は2019年時点で40.3%だ。同割合は、航空輸送で31.5%、水上輸送で14.4%を占める。

一方、MASは国内半導体産業への原油価格高騰の影響を当面、限定的とみている。同庁は、半導体生産に必要な世界のパラジウム産出量の37%がロシア産のほか、ネオンの産出量の70%がウクライナ産と指摘した。シンガポールには米国の半導体大手マイクロンやグローバルファウンドリーズ、台湾の半導体受託製造UMCなどが製造拠点を置く。同庁によると、これら大手企業は、ロシアが2014年にクリミアへ侵攻して以来、原料を備蓄し、調達先を多角化しているため、現時点で影響がない。しかし、今後の原料調達に関しては価格上昇が予想されている。

(注)家庭サポート・パッケージは、公団住宅(HDBフラット)に居住する国民に電気・水道料金を払い戻す「Uセーブ」や物品・サービス税(GST)上昇を軽減する「GSTバウチャー」の追加配布、商店街の買い物券などからなる。総額で約5億6,000万シンガポール・ドル(約526億円、1シンガポール・ドル=約94円)規模の国民生活支援。

(本田智津絵)

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