下痢症患者が過去最高レベルに、食事や水に注意

(バングラデシュ)

ダッカ発

2022年05月06日

バングラデシュ下痢国際研究所(ICDDR)は4月20日、バングラデシュで現在流行している下痢症の感染状況に関する調査結果を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

ICDDRは下痢をはじめとする疫病に関する研究を行っている政府系機関。また、年間合計21万人の受け入れが可能な、世界最大規模の下痢専門病院を国内2カ所(ダッカ、南東部のモトロブ)で運営している。通常、下痢症はモンスーン期前(3月後半~4月前半)およびモンスーン期後(10月)の年間2回のピークがある。ところが、ICDDRによると、2022年に関しては、3月第2週から下痢症患者の専門病院への受け入れが始まり、過去最高レベルの数値になっているという。

過去、2007年と2018年に下痢症が大流行した際には、ダッカの病院でピーク期には1日当たり1,000人の患者を受け入れたが、2022年は、3月後半に1日当たり1,300人を超え、3月から4月10日までの期間で、合計4万2,276人(3月のみで計3万372人。患者の約20%は子ども)を受け入れたとのこと。また、同期間、バングラデシュ南東部のモトロブの病院では、8,300人を受け入れた。このような緊急事態を受け、ICDDRは、仮設テントを増設し、医師や看護師も増員するなど、急増する患者への対応を急いでいる。

同調査では、下痢症患者にランダム検査をした結果、コレラ菌、腸管毒素原性大腸菌、ロタウイルス、カンピロバクターが確認された。原因としては、水や食べ物の質の低さ、衛生習慣の定着の低さ、急激な気温上昇などが指摘されている。ダッカ上下水道公社(DWASA)は、ICDDRより提供された、水起因の下痢を引き起こしている地域の詳細情報をもとに、対応に着手するとしている。さらなる対応として、ICDDRは世界保健機関(WHO)などと連携し、2022年5月以降、230万人に対してコレラ菌の経口ワクチンの接種を実施するとともに、国民に対して下痢症に関する啓発活動も進めていく方針だ。

ICDDRによると、下痢症により強い脱水症状となるが、多くの患者は24時間以内に状況が安定し退院となるという。2018年に下痢が大流行した際の分析(2021年)によると、ダッカの専門病院での適切な対応がなければ、同国で1万7,000人以上の患者が死亡していたという指摘もある。

4月末現在、日中は気温が30度後半になるなど高くなっており、食べ物が腐りやすい時期でもある。在留邦人の中でも下痢症状の発症事例が報告されている。腐敗した食べ物や煮沸されていない水を飲まないなど、食事には十分に注意する必要があるだろう。

(安藤裕二)

(バングラデシュ)

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