湖南立方新能源科技など、新しいEV用ナトリウムイオン電池を発表

(中国)

武漢発

2022年05月06日

中国の電池メーカーの湖南立方新能源科技と湖南鈉方新能源科技は4月19日、両社が開発したナトリウムイオン電池に関する発表会を開催した。発表によると、開発した立方第1世代ナトリウムイオン電池は、高エネルギー密度、高充電放電効率、高い安全性と優れた低温性能を有する。具体的には、常温環境で15分間充電すると、充電量は80%以上となるなど、高速充電が可能なほか、マイナス20度の環境でも高いパフォーマンスを実現できるという。

現時点で既に複数の取引先からサンプルや量産の受注があり、中低速の電気自動車(EV)、電動バス、家庭用エネルギー貯蔵などに利用される予定。6月に小ロット生産を開始し、2023年に大量生産を開始することも併せて発表した。

ほかにも、立方第1世代ナトリウムイオン電池をベースとしながら、両社は第2世代の製品を開発中という。第1世代に比べて第2世代では、エネルギー密度や利用可能回数が増加するほか、製造プロセスの統合、最適化を通じて製造コストをさらに低減できるとしている。

従来のバッテリーよりも安価

EVのバッテリーにはリチウムイオンバッテリー(LIB)が使用されることが多い。しかし、LIBにはリチウムのほかにニッケルやコバルトといった希少鉱石を利用する必要がある(2018年9月28日付地域・分析レポート参照)。これらの希少鉱石はEV需要の高まりなどもあり、足元では安定的な確保に向けた不透明感が高まっているほか、希少鉱石価格の上昇が、LIBバッテリーの製造コストや価格の上昇にもつながっている。

湖南立方新能源科技の塗健董事長は、リチウムに比べてナトリウム資源ははるかに豊富なほか、ナトリウムイオン電池はコストを低く抑えられ、安全性・安定性にも優れていると、ナトリウムイオン電池の優位性を強調している。

EVのコストの3分の1はバッテリーと言われている。製造コストや価格の低いバッテリーが製造できるようになれば、中国で続くEVの値上げラッシュも一段落する可能性もある。

(楢橋広基)

(中国)

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