アルバータ州首相、米上院エネルギー委公聴会に出席、米国への石油輸出能力は拡大可能と発言

(カナダ、米国)

米州課

2022年05月25日

米国上院のエネルギー・天然資源委員会は5月17日、ロシアによるウクライナ侵攻後の世界的な原油価格の上昇と供給逼迫を受けて、米国・カナダ間のエネルギーおよび鉱物に関する安全保障問題におけるパートナーシップの強化検討について公聴会を開催外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます、カナダ連邦政府のジョナサン・ウィルキンソン天然資源相やアルバータ州のジェイソン・ケニー州首相らが出席した。

ケニー州首相は、「現在北米で使用されていないパイプラインの能力余剰分や、2023年に予定されているカナダの太平洋沿岸までの『トランス・マウンテン・パイプライン』の拡張工事の完工により、アルバータ州は米国への原油輸出を数十万バレル増加させることができる」として、燃料油価格の引き下げに貢献できるとアピールした。

ケニー州首相はまた、「米国政府の意向があれば、米国が敵対的政権からの石油輸入から永久に解放されることを可能にする別のパイプラインの敷設も可能だ」とも述べた。

一方、ジョナサン・ウィルキンソン天然資源相は、「現在の地政学的状況を踏まえると、エネルギー安全保障にフォーカスする必要性はかつてなく高まっている」としつつも、「緊急性からエネルギー安全保障にフォーカスしすぎるあまり、気候変動対策は二の次だとする向きがカナダ、米国双方に一部あるが、そうした立場は思慮が浅く、妥当とはいえない」と述べた。加えて、ロシアへのエネルギー依存からの脱却のために、欧州が短期的には他国からの炭化水素資源の輸入を増やすと同時に、中長期的には再生可能エネルギーや水素の活用と併せ、エネルギーの安全保障を図ろうとしていることを例に挙げ、「カナダと米国においてもグリーン化を推進する必要がある」とした。

なお、ケニー州首相が言及した新しいパイプラインの敷設提案について、同相は、「両国政府間ではこれまでほとんど議論がされていない」と公聴会後にコメントしたとされる(「グローブ・アンド・メール」紙5月18日)。

ケニー州首相は、アルバータ州で展開する連合保守党(UCP)の党首であり、2019年4月の州議会選挙で4年ぶりの保守党政権を誕生させた人物で、同州のエネルギー産業界からの支持が厚い(2019年4月23日記事参照)。

(高山さわ)

(カナダ、米国)

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