アルバータ州選挙で野党・連合保守党が勝利、エネルギー産業は歓迎

(カナダ)

トロント発

2019年04月23日

4月16日に行われたカナダのアルバータ州議会選挙で、ジェイソン・ケニー党首率いる野党・連合保守党(UCP)が過半数の63議席を獲得外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますし(得票率:54.8%、選挙広報サイト「エレクションズ・アルバータ」4月19日時点)、同州では4年ぶりとなる保守党政権が4月30日に発足する。前回2015年の選挙では40.6%の得票率だった与党の新民主党(NDP)は、今回32.7%に低下し、議席数は24議席にとどまった。

ケニー次期州首相は選挙期間中、石油価格の急落以降、アルバータ州経済は失速し、新パイプライン建設が進まず、低価格での石油輸出を余儀なくされている中、NDPが連邦政府との環境政策協調に基づき計画を進めてきた結果、パイプライン新設が遅延していることを批判してきた。UCPの勝利により、今後、同党が「石油産業の敵」と見なす連邦政府、ブリティッシュ・コロンビア(BC)州、ケベック州などとの政治的、法的な論争が激しくなること見込まれている。短期的には、州炭素税の廃止や、連邦炭素税、連邦環境審査法(C-69)をめぐる訴訟などに着手する見通しだ。また、これら諸問題の解決策として、今秋の連邦議会選挙で、自由党政府の追い落しを図っていくことも予想される。ケニー次期州首相は、州総選挙の翌17日の勝利演説で、BC州、ケベック州、そして連邦政府各首相に向け、「お互い非難し合うことでは関係は築けない。まず話し合って、共通点をみつけることから始めたい。そして、アルバータ州の重要な経済的利益を行使する上で、これまで以上に強硬な措置を取らなくても済むことを願っている」と述べた(「グローブ・アンド・メール」紙4月17日)。また、州政権としての最初の仕事は、BC州への石油輸送停止を可能にする法律(議会可決済み)を公布することとし、また、州の炭素税廃止の法案を議会に提出し、法律を制定することになるだろうと語り、公約を進めていくことを強調した。

ケニー次期州首相がBC州への石油輸送停止に関する法律を、早期に公布すると発言したことに対し、ジョン・ホーガンBC州首相は、ケニー次期州首相と建設的な関係を築くことを目指していると語った。

また、ケニー次期州首相はケベック州に対し、アルバータ州の石油産業を支援し、パイプラインの建設を許可するよう訴えた。レゴー・ケベック州首相はその提案を拒否したが、ケニー次期州首相はレゴー州首相と直接会って話をしたいと語っている。

石油業界はUCP次期州政権に期待

ケニー次期州首相の勝利に対し、カルガリーに本社を置くホワイトキャプ・リソーシズのグラント・ファガーヘイム代表取締役兼CEO(最高経営責任者)は「ケニー氏の公約は全て格別で、アルバータ州やカナダをより安定的な投資環境に戻し、エネルギー業界に対し国内外からの投資や雇用機会を呼び戻すだろう」と話した。石油業界幹部は、UCPが法人税率を引き下げ、「競争力のある」気候変動政策を確立するという公約を歓迎しており、カナダ石油生産者協会のティム・マクミラン会長は「ケニー次期州首相が公約の多くを素早く実行してくれることを期待している」と語った。

(酒井拓司)

(カナダ)

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