英国初の衛星打ち上げを2022年夏に予定、宇宙産業は拡大

(英国、米国)

ロンドン発

2022年05月13日

英国の国防科学技術研究所は5月10日、南西イングランドのニューキーから2022年夏に衛星を打ち上げ予定外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますだと発表した。衛星の打ち上げは英国で初。

衛星はフランスのエアバス・ディフェンスアンドスペースが設計し、英国の国防関連企業BAEシステムズの子会社インスペースミッションズが製造した。2つの小型衛星を通じ、GPSなどの無線信号の監視のための試験プラットフォームを提供することで、同盟国と接続された宇宙通信システムの構築を目指す。他国との協力により、高性能で柔軟なシステムを低コストで構築するための方法について理解を深めることが、今回のミッションのねらいだと説明する。

英国政府は2021年9月に「国家宇宙戦略PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」、2022年2月には「国防宇宙戦略PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)」を発表している。国家宇宙戦略では、「宇宙経済の成長とレベルアップ」「宇宙における、また宇宙を通じた国益の保護と防衛」「英国民、世界に資する宇宙の活用」などの目標を掲げ、その目標達成に向けて複数の柱が示された。英国全体での宇宙産業のエコシステム構築や、宇宙関連の規制で世界を主導することで英国宇宙産業の成長ポテンシャルを引き出すことなどが柱の例として挙げられる。

英国宇宙庁が2021年に実施した調査外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによれば、英国の宇宙関連の機関は全体で1,815機関、うち宇宙関連の研究拠点ウエストコット・ベンチャー・パーク外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますサウスコースト・センター・オブ・エクセレンス外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますが位置する南東部に450機関、ロンドンに317機関が立地。雇用者数は順調に増加しており2020/21年度の雇用者数(推定値)は4万7,872人と2010/2011年度の2万8,942人から約1.7倍となっているほか、機関への投資も件数、金額ともにここ10年で増加している。

米国との比較では課題もみられる。同調査ではアンケート調査も実施しており、投資環境については、回答企業の約3分の1が、英国含む欧州での投資環境につき課題があると回答。ミドル、レイトステージで必要とされる大規模な出資が英国では得にくいことを指摘し、米国を1億ポンド以上の大規模な投資を得やすい国とした。

米国の分析・エンジニアリング企業ブライス・テックPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)によると、2012年から2021年の間に打ち上げられた小型衛星のうち、英国の事業者が運用しているものの割合は約9%と世界2位となっている一方で、1位の米国は70%を占め、両国の間には大きな差がある。

(山田恭之)

(英国、米国)

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