最低賃金を25%引き上げ、5月1日から実施

(マレーシア)

クアラルンプール発

2022年05月02日

マレーシアでは5月1日から、最低賃金が全国一律で1,500リンギ(約4万3,950円、1リンギ=約29.3円)へ引き上げられた。政府が4月27日付官報で、2022年最低賃金令外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを公示した。

マレーシアの法定最低賃金は、2020年最低賃金令に基づき、首都クアラルンプールを含む主要56都市で月1,200リンギ、それ以外の地域では同1,100リンギとされていた(2020年1月16日記事参照)。2011年国家賃金評議会法PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(法律732)第25条(1)は、最低賃金令を2年ごとに見直すことを規定しており、今年は前回の引き上げから2年目に当たる。人的資源省は当初、2022年内に最低賃金を改定すると表明していたが、イスマイル・サブリ首相が3月19日に開催された統一マレー国民組織(UMNO)の年次総会において、1,500リンギへの引き上げを5月1日に実施する旨を突如発表した。

2022年最低賃金令で規定された体系は添付資料のとおり。従業員5人以上の雇用主、および従業員数に関わらずマレーシア標準職業分類(MASCO)でに分類される雇用主には、業種や業績を問わず一律1,500リンギの最低賃金が適用される。この1,500リンギは基本給のみで、その他手当は含まれない。月給のほかに日給と時給が規定され、日給は1週間の営業日数に応じて異なる。

ジェトロが実施した「2021年度アジア・オセアニア進出日系企業実態調査」によると、在マレーシア日系企業における最大の経営上の問題点は「従業員の賃金上昇」(64.2%)であり、前回調査(59.2%)から比率を上げていた。今回の引き上げは25%もの大幅な増額であり、かつ実施時期が突然発表されたこともあり、日系産業界を含めた各産業団体からは批判が相次いでいた。最低賃金引き上げの影響として、賃金全体の底上げ、「新型コロナ禍」や2021年末の洪水から再建途上にある企業への打撃、製造業における製品価格への転嫁、所得増加分が国内消費ではなく外国人労働者の国外送金へ振り向けられることなどへの懸念があることから、引き上げは段階的に実施すべきとの見方が産業界では大宗を占める。マレーシア製造業連盟(FMM)は4月28日に声明を発表し、「政府当局との複数の協議にもかかわらず、賃金の段階的な調整を求める声は完全に無視された」と強い失望感を表した(FMM声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

(吾郷伊都子、エスター頼敏寧)

(マレーシア)

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