両用品目輸出管理条例案が発表、審査期間や包括許可の申請要件などが明らかに

(中国)

北京発

2022年05月26日

商務部は4月22日、「両用品目輸出管理条例」意見募集稿外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。同条例案は輸出管理法(2020年12月1日施行)の実施を徹底し、両用品目(注1)の輸出管理を強化・規範化し、国家の安全および利益を維持し、拡散防止などの国際的義務を履行するため起草されたものと説明されている。

併せて公表された説明によると、両用品目の輸出管理はこれまで4つの行政法規など(注2)により実施されてきたが、輸出管理法の施行によって中国の輸出管理業務が新たな段階に入ったことを踏まえ、輸出管理法が定める関連法律制度をさらに具体化・実施し、両用品目の輸出管理に関する統一された行政法規を制定するため、今般、同条例案を起草したとしている。

条例案第13条では、国務院商務主管部門(商務部)は輸出管理法および条例案の規定に基づき、関係部門と共に両用品目の輸出管理リストを策定・調整すると規定された。リストの策定・調整にあたっては意見募集を行い、かつ、国家の安全および利益並びに拡散防止等の国際的義務の履行に対する影響を考慮して必要な産業調査や評価を行うものとされた。

また、第7条では、商務部が両用品目の輸出管理ガイドラインを公布し、輸出者が両用品目の輸出管理内部コンプライアンス制度を構築整備するよう指導するとした(注3)。

さらに、条例案では両用品目の輸出許可申請書類や当局の許可審査に要する期間、包括許可(注4)の申請要件、輸出許可申請を免除する事由などについて具体化された。

なお、輸出者は輸出許可申請時に、エンドユーザーが発行した、エンドユーザーおよび最終用途証明書を提出しなければならず、商務部は、必要に応じてエンドユーザーの所在国・地域の政府機関が発行した、エンドユーザーおよび最終用途証明書を併せて提出するよう輸出者に要求できるとされた。

このほか、中国の公民や法人、その他の組織は、商務部の同意なしに、外国政府が行う輸出管理に関する現場視察あるいは審査を受け入れることを約束したり、受け入れてはならないとも規定された。

今後、意見募集結果を踏まえて同条例の公布や既存の各種輸出管理リストの改定などが進められていくとみられる(注5)。なお、条例案における輸出管理の定義は輸出管理法とほぼ同様となっているが、企業にとって特に関心の高い「再輸出」や「みなし輸出」の概念に関して、今後いっそうの具体化・明確化が図られるか、引き続き注目される(注6)。

(注1)条例案第2条によると、両用品目とは、民生用途を持ちつつ軍事用途も持つもの、あるいは軍事的潜在力の向上に寄与するもので、特に大量破壊兵器およびその運搬手段の設計・開発・生産あるいは使用に用いられる貨物・技術・サービスを指す。

(注2)4つとは「核両用品および関連技術輸出管理条例」「ミサイル並びに関連品目および技術輸出管理条例」「生物両用品並びに関連設備および技術輸出管理条例」「特定化学品管理条例」を指す。

(注3)商務部は2021年4月に「両用品目輸出事業者の輸出管理内部コンプライアンス体制構築に関する指導意見」を改正・施行している(両用品目輸出事業者の輸出管理内部コンプライアンス体制の構築に関する指導意見の概要PDFファイル(416KB)および実務上のポイントPDFファイル(417KB)を参照)。

(注4)輸出許可には個別許可と包括許可の2種類があり、条例案第16条によると、個別許可は、輸出者が許可証の有効期限内に単独のエンドユーザーに対して1種類の両用品目を1回輸出することを許可するもの、包括許可は、輸出者が許可証に記載された範囲と有効期限内において、複数のエンドユーザーに対して複数種類の両用品目を複数回輸出することを許可するものと規定されている。また、第19条において、個別許可の有効期限は通常1年以内、包括許可の有効期限は 2 年以内とされた。

(注5)一般財団法人安全保障貿易情報センター(CISTEC)など日本の10の産業団体は同条例案について共同意見書PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を提出している。

(注6)なお、2021年12月30日に開設された商務部の輸出管理に関する情報ポータルサイト「中国輸出管理情報網外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」において公開されている商務部国際貿易経済合作研究院の張威副院長による説明動画「『輸出管理法』解説外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」では、「再輸出」について、「すでに輸出された管理品目が、国外において、ある国から別の国に再度新たに輸出されることと解される」と説明されている。

(小宮昇平)

(中国)

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