衛星から人工流れ星を発生させる日系・宇宙スタートアップのALEが米国に進出、今後の展望を聞く
(米国、日本)
アトランタ発
2022年05月10日
宇宙スタートアップのALE(エール、本社:東京都)は2022年3月、米国フロリダ州にスカイ・キャンバス・アメリカ(Sky Canvas America)を設立した。宇宙を広大なキャンバスに見立て、人工の流星群を発生させる、世界に類のないビジネスを展開していくという。
(問)貴社(ALE)の概要について。
(答)2011年に創業した宇宙スタートアップ。独自の科学技術力と創造力を使い、世界初の人工流れ星による宇宙エンターテイメントなどの開発に取り組んでいる会社。開発によって得られた知見を科学技術全般の発展にも生かせればとも考えている。
(問)人工流れ星とはどのようなものか。
(答)人工衛星から流星源である粒を指定された場所にて高速で放出し、自然の流れ星と同様、大気圏突入時に発光させる仕組み。人工流れ星は、他の人工衛星と衝突する危険性がないことを確認のうえで大気圏に突入し、高度約60~80キロで消滅する。そのため、宇宙デブリ(注)が発生しない。人工衛星は地上400キロの高さで、9日間かけて地球を一周する。
(問)海外ではどのようなビジネスを展開していく予定か。
(答)まずは「宇宙×エンターテイメント」の新しいブランド「スカイ・キャンバス(Sky Canvas)」確立のためのブランディングを行なっていき、世界初となる人工流れ星のショーを実施することを目指している。ショーの実施までにもSNSやメディアを通じて、人工流れ星のショーを正しく理解していただけるよう積極的に情報発信していきたい。その一環で、今注目の非代替性トークン(NFT)に関しても注目しており、人工流れ星ショーにつながるコンテンツを開発・出品することなどを考えている。
人工流れ星は、約200キロ圏内の広いエリアで見ることができる。チケットで入場を制限しての観測にはなじまないので、観光客誘致や都市再生を目指す自治体や企業と組んでいきたい。衛星は地球全体を周回するので、米国以外にもさまざまな場所で流れ星を発生させることができる。商用機として打ち上げる3号機からサービスを開始するが、同機には約900発分の流星源を積み、2年間にわたりサービスの提供が可能となる予定。
(問)なぜ進出先にフロリダ州マイアミを選んだのか。マイアミの印象は。
(答)大きく3つの理由がある。1つ目は、フロリダ州にはテーマパークやクルーズなど魅力的なスポットが多く、観光とエンターテイメント・ビジネスが盛んであること。2つ目は、フロリダ州には全米2位を誇る航空宇宙産業のクラスターがあること。将来的に現地生産や一部の製造プロセスの外注を考えた場合、エンジニアの確保やサプライチェーンの構築がしやすい。3つ目は、マイアミがNFTのハブであること。世界最大級のアートフェア「アート・バーゼル」が毎年開催されるのに加え、最近は仮想通貨(暗号資産)関連企業も進出し、「アート×仮想通貨」で盛り上がりをみせている。
マイアミは、ビジネス・ネットワーキングがしやすい土地だと感じている。他の国や地域も選択肢に入れて進出先を検討したが、外から来た企業にとって仕事がしやすい環境であることは大変有難く感じている。この点、最近マイアミには多くのスタートアップや金融機関が州外から進出して活躍しているし、今後さらに発展しそうな勢いも感じる。
スカイ・キャンバス・アメリカCEOの大和芽萌里氏(ジェトロ撮影)
(注)なんらかの意味がある活動を行うことなく、地球の衛星軌道上(低・中・高軌道)を周回している人工物体。
(高橋卓也)
(米国、日本)
ビジネス短信 132a335030fcd2f5