ルノー、ロシア事業の売却を決定

(ロシア、フランス)

欧州ロシアCIS課

2022年05月18日

フランスの自動車大手ルノー・グループ(以下、ルノー)の取締役会は5月16日、ロシア事業の売却に関する契約締結の承認を発表した(5月16日付プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。ルノーのロシア法人であるルノー・ロシアの株式100%をモスクワ市に、ルノーが保有するロシアの自動車メーカー、アフトワズの株式67.69%を産業商務省所管の自動車・エンジン中央科学研究所(NAMI)に売却する。本契約では、ルノーがアフトワズの株式を買い戻す選択肢が定められており、今後6年の間に行使することが可能としている。なお、売却額は非公表。

本決定について、ルカ・デメオ最高経営責任者(CEO)は「われわれは困難であるが必要な決断をした。ルノーの業績と自社が将来ロシア市場に戻る選択肢を維持しながら、ロシア国内にいる4万5,000人の従業員に対し責任ある選択を行った」と述べている。

複数のロシア政府関係者が本件に言及している。産業商務省のデニス・マントゥロフ大臣は「ルノーの株式譲渡により、制裁下でもアフトワズの経営が安定し、国内における生産能力や雇用を維持することができる」と評価した(「インターファクス通信」5月16日)。モスクワ市のセルゲイ・ソビャニン市長は5月16日、かつてソ連時代から1990年代まで生産されていた「モスクビッチ」ブランドの乗用車をルノーのモスクワ工場で生産すると発言した。従業員の雇用維持が目的としている。モスクビッチ生産にあたっての技術パートナーを自動車大手カマズとし、同社および産業商務省とともに自動車部品生産の現地化に着手するという(2022年5月16日付市長ウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。なお、マクシム・リクストフ副市長はテレビ局「モスクワ24」の番組の中で、ルノーが同社のモスクワ工場を買い戻す選択肢はない、と発言した。また、ルノーのモスクワ工場ではタクシーおよびカーシェアリング用の乗用車が生産される予定だという(「コメルサント」紙5月16日)。

ルノーは3月23日に、モスクワにある工場の稼働を即時停止するとともに、アフトワズへの出資について再検討するとしていた(2022年3月25日記事参照)。

(宮下恵輔)

(ロシア、フランス)

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