小型原発メーカーの米ニュースケール・パワー、上場で資本増強、商業化加速へ

(米国)

ヒューストン発

2022年05月09日

小型モジュール式原子炉(SMR)の技術開発を行なう米国のニュースケール・パワー(本社:オレゴン州ポートランド)は5月2日、特別買収目的会社のスプリング・バレー・アクイジション(本社:テキサス州ダラス)との企業結合を完了したと発表した。

プレスリリースでは、今回の企業結合によって設立する新会社の企業価値は19億ドルに上る見込みで、ニューヨーク証券取引所への上場、株式取引は5月3日開始としている。この資本を元手に、ニュースケールは自社のSMR技術の商業化を加速させたい考えだ。スプリング・バレーは4月28日に臨時株主総会を開き、この取引を承認した。スプリング・バレーは同取引で有力投資家からの2億3,500万ドルの私募増資を含む3億8,000万ドルの資金を得るとしている。

ニュースケールには既に、米エンジニアリング大手フルアや韓国の斗山エナビリティーのほか、日揮ホールディングス、IHI、国際協力銀行などが出資している。

ニュースケールのジョン・ホプキンス社長兼最高経営責任者(CEO)は「当社は、より安全でスマートかつコスト効率の高い先進的な原子力を開発し、将来の幅広い電気・熱エネルギー需要に応えること、つまりは、石炭火力発電所に代わるカーボンフリーかつ出力調整可能なベースロード電力による、商業規模の海水淡水化やクリーン水素生産などに対応することを使命としてきた」「ニュースケールは、小型原子炉技術の設計と導入に特化した世界初の株式公開企業となった。上場企業として、世界中の喫緊のクリーンエネルギー需要を満たす取り組みを加速させる」と述べている。

原子力発電は二酸化炭素(CO2)排出を伴わないエネルギー源として再注目されている。2021年6月2日には、米マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏が設立した原子力の主要技術革新企業テラパワー(本社:ワシントン州ベルビュー)、投資家のウォーレン・バフェット氏が所有する電力会社パシフィコープ(本社:オレゴン州ポートランド)、マーク・ゴードン・ワイオミング州知事がワイオミング州に次世代原子炉の実証プラントを建設すると発表している(2021年6月9日記事参照)。

(沖本憲司)

(米国)

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