中国ドイツ商会調査、ウクライナ情勢の影響で3割の企業が対中投資・事業計画を保留と回答

(中国、ドイツ、ロシア、ウクライナ)

中国北アジア課

2022年04月19日

中国に進出したドイツ企業で構成する中国ドイツ商会は3月31日、ウクライナ情勢と新型コロナウイルスの感染拡大による、会員企業の中国ビジネスへの影響調査の結果を公表した(注1)。今回の調査結果について、同商会は、在中国のドイツ企業が、現在中国の一部都市において実施されているロックダウンなどの新型コロナウイルス感染拡大抑止策やウクライナ情勢の自社のビジネスへの懸念を強めている、と指摘している。

まず、ウクライナ情勢の在中ドイツ企業への影響について、調査に回答した会員企業のうち46%が、現在発生している地政学的危機により、欧州と中国間の物流(欧州発着、経由を含む)に、「完全に影響がある」もしくは「深刻な影響がある」と回答した。

また、エネルギーと原材料価格の上昇の影響については、55%の企業が「完全に影響がある」もしくは「深刻な影響がある」と回答した。

こうした状況を受け、46%の企業が他国・地域と比較した場合の中国市場の魅力低下を指摘したほか、57%の企業が現在発生している地政学的危機により、「本社の中国戦略に影響を与えている」と回答した。さらに、中国における事業や投資に対する具体的な影響としては、「計画していた事業もしくは投資を保留する」との回答が32%、「現在、中国で行っている事業を中国外に移転する可能性がある」が10%となった。

一方で、「より多くの部品のサプライチェーンが中国にシフトする」との回答が23%、「研究開発機能などの中国現地化が加速する」との回答が22%、「中国でのさらなる事業展開もしくは投資を行う」との回答が14%となった。

新型コロナ感染拡大によりサプライチェーンに深刻な影響

調査では、中国の新型コロナウイルス感染拡大の自社ビジネスへの影響について(複数回答)、51%の企業が自社の物流・倉庫保管が「完全に寸断されている」もしくは「深刻な影響を受けている」と回答、46%の企業はサプライチェーンが「完全に寸断されている」もしくは「深刻な影響を受けている」と回答した。一方で、「事業への影響はない」は7%にとどまった。

同商会は、調査のプレスリリースにおいて、中国政府に対し、「ビジネス運営とサプライチェーンへの深刻な影響を最小限とするための方針を示すことが必要だ」とし、「現時点においては、タイムリーかつ透明性が確保された意思疎通が早急に求められる」とコメントした。

なお、中国ドイツ商会が2022年1月に発表した「中国におけるドイツ企業のビジネス」に関する調査では、71%の企業が「今後2年間で中国への投資を増やす計画がある」と回答していた。また、「1年以内に中国から完全に撤退する計画がある」と回答した企業は0%、「現時点で具体的な計画はないが検討中」が4%、「撤退の計画はない」が96%だった(注2)。

(注1)調査は、3月18日から3月27日にかけて実施し、同商会会員のうち、391社からの回答を得たもの。

(注2)同調査は2021年10月14日~11月3日に、中国ドイツ商会の会員企業に対して実施されたもの。「今後2年間で中国への投資を増やす計画があるか」との設問に回答した企業は576社。「1年以内に中国から完全に撤退する計画があるか」との設問に回答した企業は538社。

(藤原智生)

(中国、ドイツ、ロシア、ウクライナ)

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