一帯一路関係国と交通・エネルギーなどの分野でグリーン協力を推進、新規の海外石炭火力プロジェクトは停止と明記

(中国)

北京発

2022年04月14日

中国の国家発展改革委員会など4部門は3月28日、「一帯一路の共同建設によるグリーン発展推進に関する意見」外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(以下、意見)を発表した。

意見では、インフラ、エネルギー、交通、産業協力、貿易、金融、テクノロジーなどの分野における「一帯一路」関係国とのグリーン発展協力の取り組みなどについて規定した(詳細は添付資料表を参照)。そのほか、協力をサポートする措置として、グリーンファイナンス市場の開放やグリーン発展に関する関係国との政策対話、データ共有、技術移転や人的交流などについても盛り込まれた。

中央財経大学グリーンファイナンス国際研究院の王遥院長は、一帯一路関係国の多くの国で発展が見込まれる風力発電や太陽光発電の設備製造において、中国は世界で最も産業チェーンが整っており、技術レベルや製造規模においても世界上位にあるため(注1)、一帯一路のクリーンエネルギー協力を強力にサポートできるとの見方を示した(「中国発展網」3月31日)。

また、中国興業銀行チーフエコノミストの鲁政委氏は、水力発電、原子力発電、特別高圧送電網などのエネルギー分野や、高速鉄道、EV(電気自動車)などにおいても中国の技術水準は世界有数で、国内での運用経験も豊富でコスト競争力も高いことから、こうした分野で協力を行うことは中国と一帯一路関係国の双方にメリットをもたらすとした(「人大重陽」3月31日)。

このほか、石炭火力発電プロジェクトについて、意見では、国外での新規建設をすべて停止する一方、現在建設中のプロジェクトについては慎重に進めるとした。既存プロジェクトについては、石炭をクリーン・高効率に利用し、高効率な脱硫・脱硝・集塵およびCCUS(二酸化炭素の回収・利用・貯留)といった先進技術を活用して省エネ・環境保護設備をグレードアップするよう企業に対して奨励するとした。

王院長は、新規の石炭火力発電プロジェクト停止はすでに約束していた内容を明確化したもの(注2)だが、建設中・後のプロジェクトについては今回の意見において新たに規定されたものだと指摘した(「中国発展網」3月31日)。

中国は2021年6月、28カ国(注3)とともに「一帯一路グリーン発展パートナーシップイニシアティブ」(注4)を提唱したほか、一帯一路関係国や国際機関と50以上の生態環境保護に関する協力文書を結んでいるとされる(「経済参考報」4月8日)。今後、こうした国々との間でグリーン分野での協力がさらに進展するか注目される。

(注1)国家エネルギー局の章建華局長によれば、2020年末時点で中国は再生可能エネルギー関連設備の製造において世界1位となっており、世界の水力発電所建設の70%を中国企業が請け負い、世界の風力発電設備生産量の50%を中国が占めているほか、太陽光電池の関連部品の全ての製造工程において中国企業の割合が50%以上を占めている(2021年4月7日記事参照)。

(注2)習近平国家主席は2021年9月の国連総会において、海外において新規の石炭火力プロジェクトを行わない旨を表明した。

(注3)28カ国の内訳はアフガニスタン、バングラデシュ、ブルネイ、カンボジア、チリ、コロンビア、フィジー、インドネシア、カザフスタン、キルギス、ラオス、マレーシア、モルディブ、モンゴル、ミャンマー、ネパール、パキスタン、フィリピン、サウジアラビア、シンガポール、ソロモン諸島、スリランカ、タジキスタン、タイ、トルクメニスタン、アラブ首長国連邦(UAE)、ウズベキスタン、ベトナム。

(注4)同イニシアティブでは、「一帯一路グリーン発展国際連盟」の設立や「一帯一路グリーン投資原則」が公表されたほか、今回意見に盛り込まれた取り組みと重なる分野における協力が提唱されている。

(小宮昇平)

(中国)

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