下院で新型コロナワクチン接種義務化法案を否決、義務化のめど立たず

(ドイツ)

ベルリン発

2022年04月18日

ドイツ連邦議会(下院)で4月7日、新型コロナウイルスワクチン接種を一般へ義務化する感染症予防法の改正案が否決された。同改正案は与党3党〔社会民主党(SPD)、緑の党、自由民主党(FDP)〕の議員グループによるもので、2022年10月15日から60歳以上を対象にワクチン接種を義務化する内容だったが、賛成296、反対378、棄権9で否決となった。

同国では3月15日以降、医療機関や高齢者介護施設に勤務する従業員を対象にワクチン接種を義務付けている(2021年12月6日記事参照)。今回の改正法案否決を受け、新たな法案提出の予定は発表されておらず、ワクチン接種の義務化の議論は後退した。

連邦政府は、2021年12月12日に倫理委員会が発表した、一般へのワクチン接種義務を条件付きで推奨する特別勧告を踏まえ、ワクチン接種義務を拡大する改正法案を作成し、党議拘束なしの自由投票を行うとしていた(2021年12月24日記事参照)。

しかし、与党の中でもFDPは義務化に反対する意見が強く、連邦政府としての法案提出は行うことができなかった。このため、上述の与党3党の議員グループによるものをはじめとする複数の義務化法案に加え、義務化に反対する法案も含め、複数の法案が連邦議会に提出されたが、いずれも否決された。

義務化を推進してきたカール・ラウターバッハ保健相は「ワクチン接種の義務化を提唱する全ての人々にとって明白かつ苦い敗北だ」とコメント。ワクチン接種キャンペーンをさらに強化すると発表した。さらに、4月に緩和された制限措置(2022年3月23日記事参照)は「緩和する余地はこれ以上ない」として、今秋の感染再拡大に備え、遅くとも現行の制限措置が失効する9月24日までには感染症予防法を再度改正して、制限措置を引き続き実施できるようにする必要があるとの見解を示した。

義務化法案の否決については、医療関係者からは賛否のコメントが寄せられた。連邦保険医協会(KBV)のアンドレアス・ガッセン理事長は7日、「連邦議会が最終的に市民の自己責任を支持した」として評価した。一方で、ドイツ病院連盟(DKG)のゲラルド・ガース理事長は8日、「接種義務化導入の失敗は医療従事者にとって苦い結果となった」とコメント。秋の感染拡大時期に再び医療が逼迫する懸念を示し、一般への接種義務付けが拡大されなければ、医療従事者への義務化も正当化できないと反発した。

(中村容子)

(ドイツ)

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