米国の対中輸出、教育と旅行分野で大きな減少、米中ビジネス協議会報告書

(米国、中国)

米州課

2022年04月18日

米中貿易ビジネス協議会(USCBC)は4月5日、中国向けの2022年米国輸出報告書を公表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。それによると、2021年に財の対中輸出は前年から21%増加して過去最高の1,492億ドルを記録する一方、サービスの対中輸出は低調で、確認可能な最新データである2020年の同輸出額は前年比33%減の370億ドルとなった。これは2013年以来最低の水準で、特に新型コロナウイルスの流行が教育と旅行に破壊的な影響を及ぼした。

また、財とサービスを問わず、対中輸出に支えられている米国の雇用は2020年時点で前年より約4万4,000人少ない85万8,486人となっている。

財の2021年対中輸出を品目別にみると、油糧種子・穀物が最も多く219億ドル、それに半導体・同部品が141億ドル、石油・ガスが120億ドル、医薬品が79億ドルと続いている。イリノイ州、アイオワ州、カンザス州、ネブラスカ州はそれぞれ、油糧種子・穀物の中国向け輸出額が前年より5億ドル以上増えた。州別の製品輸出額は、テキサス州が最大で206億ドル(前年比23.0%増)、2番目のカリフォルニア州が165億ドル(前年比11.1%増)、3番目のオレゴン州が103億ドル(前年比10.6%増)で、対中輸出を推進した。

対して、サービスの対中輸出(2020年)では、教育が最も大きな割合を占め、116億ドルに上ったが、前年(142億ドル)と比べて19.3%減少しており、大きな打撃を受けた。旅行に至っては、個人旅行とビジネス旅行のいずれも前年比で90%強減少し、前者は2019年の93億ドルから9億1,540万ドルに、後者は36億ドルから3億4,710万ドルに急落した。

USCBCのクレイグ・アレン会長は5日のオンライン記者会見で「米中関係がこれからどうなるかは誰にもわからない。重要なことは、対中輸出が全米各地に存在するさまざまな産業の収益と競争力の維持に貢献しているということだ。対中輸出は、観光産業からアイオワ州の農民や牧場主、オレゴン州の半導体チップメーカー、ノースカロライナ州の革新的な製薬会社に至るまで、米国の雇用を支えている」と述べ、対中輸出の重要性を訴えた。

米国通商代表部(USTR)のキャサリン・タイ代表は3月30~31日に開かれた議会公聴会で「古い脚本のページをめくる必要がある」と指摘し、対中政策の変更を示唆している(2022年4月5日記事参照)。また、米商務省のパメラ・ファン副次官補(アジア担当)は6日、インド太平洋経済枠組み(IPEF)を「5月にも発足させたい」と語っており、中国に対抗する経済圏の構築に向けた動きが進むことで、米国企業の対中ビジネスに影響が出てくる可能性がある。

(片岡一生)

(米国、中国)

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