米石油サービス大手ベーカー・ヒューズ、米モザイク・マテリアルズ買収、次世代CO2回収技術促進のため

(米国)

ヒューストン発

2022年04月22日

米国石油サービス大手ベーカー・ヒューズ(本社:テキサス州ヒューストン)は4月20日、製造拠点や発電所などの点源からの二酸化炭素(CO2)削減や大気のCO2除去のための次世代CO2回収技術の開発と事業拡大を図るため、米国モザイク・マテリアルズ(本社:カリフォルニア州アラメダ)の買収を発表した。

モザイクは、金属有機構造体(MOF)技術(注)を用いたCO2を選択的に回収可能な独自の吸着材を開発する。同社のMOF技術は、潜水艦や宇宙ミッションなどの閉鎖空間で空気の質を改善する技術として、米国海軍やNASAにも採用される見込み。ベーカー・ヒューズは、自社で保有するモジュール設計や材料科学などの既存技術と、モザイクの技術を組み合わせ、省エネ高効率なCO2の直接大気分離回収(DAC)システムを構築する計画だ。

プレスリリースでは、気候変動対策やCO2排出削減の目標を達成するためには、製造拠点や発電所などの点源から排出されるCO2の回収だけでなく、DACについても必要と述べている。そのため、モザイク技術を活用したDACシステムは、石油精製や航空、海運、自治体、鉄鋼、セメント製造など、エネルギーと産業のバリューチェーンのさまざまな部門で利用可能としている。加えて、経済的で商用化可能、かつエネルギー効率の高いDACシステムを構築し、大気中から効果的にCO2を回収することは、合成燃料を含むCO2利用市場への供給でも重要となるとしている。

ベーカー・ヒューズのエグゼクティブ・バイス・プレジデントであるロッド・クリスティ氏は「DACを含む多方面からのアプローチによるCO2除去は、気候変動を克服する上で非常に重要」「CO2を大幅かつ効率よく削減し、CO2削減が困難な産業に対して包括的で多様なポートフォリオを開発していくために、モザイクを含む新しい技術を有する企業への投資を進めている」と述べている。

同社は脱炭素に向けた新たな領域の取り組みを加速させている。最近でも3月1日に、閉ループ式地熱発電技術を持つ米国のグリーンファイア・エナジー(本社:カリフォルニア州サンフランシスコ)に出資することを発表している(2022年3月8日記事参照)。

(注)金属有機構造体(MOF)は、液体や気体から物質を除去、分離する際に用いられる多孔質材料で、複雑な構造設計が可能なことから、従来の多孔質材料と比較して吸着性に優れるなどの特性を有する。

(沖本憲司)

(米国)

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